機能性子宮出血とは,子宮からの不正出血のうち,妊娠に関係した出血と器質的疾患による出血を除外したものを言う。思春期と更年期にみられることが多く,全体の20%は思春期に,50%以上は45歳以上でみられる。若年者の場合は,視床下部-下垂体-卵巣系の未成熟による排卵障害であることが多い。初経後の1年間は性周期の80%が無排卵周期であり,その後時間を経て排卵周期が確立される。無排卵周期の場合はプロゲステロンの分泌が起こらず,破綻出血として機能性子宮出血が生じる。性成熟期における無排卵性出血は20%程度であり,排卵周辺期に起こる生理的なエストロゲンの低下や黄体機能不全によることが多い。更年期に起こる機能性子宮出血は無排卵性出血であることが多く,出血量は多くなる傾向にある。
機能性子宮出血の用語の定義はあいまいであり,本稿では機能性子宮出血から血液凝固障害および内膜機能障害を除外することとした1)。
なお,月経異常や不正出血,機能性子宮出血に関する用語(menorrhagia,metrorrhagia,functional uterine bleeding,dysfunctional uterine bleeding)の定義を統一し明確化する目的で,The International Federation of Gynecology and Obstetrics(FIGO)は,子宮異常出血(abnormal uterine bleeding:AUB)について性器出血の症状別,原因別の分類を提案している2)。
正常な月経およびAUBの定義についてはFIGO AUB System 1が,AUBの原因分類に関してはFIGO System 2が用いられる。System 1では4つのパラメータ(頻度,周期性,期間,および量)を用いて正常な月経を定義し,当てはまらないものをAUBと分類する。System 2ではAUBの原因別に「画像化」および/または病理組織学的に定義できる「構造的」疾患(polyp, adenomyosis, leiomyoma, malignancy and hyperplasia:PALM)と,画像化できない「非構造的」疾患(coagulopathy, ovulatory dysfunction, endometrial dysfunction, iatrogenic, and not otherwise classified:COEIN)に分類する(PALM-COEIN system)。PALM-COEIN systemにおいて,いわゆる「機能性子宮出血」はovulatory dysfunction(AUB-O)に分類される。
日本産科婦人科学会編集・刊行の「産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版」3)では,AUBの訳語として「不正子宮出血」があてられている。今後わが国においても,AUBに関する定義と用語に関する国際基準への統一が検討されている4)。
まず妊娠および子宮外(外陰部・腟)からの出血を除外する。次に器質的疾患(ポリープ,腺筋症,筋腫,悪性疾患,血液凝固障害,内膜機能障害等)を除外することにより,機能性子宮出血と診断する。機能性子宮出血の原因検索として,多囊胞性卵巣症候群(PCOS)や甲状腺疾患などによる排卵障害,医原性およびそれ以外にわけて鑑別診断する。
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