子宮腺筋症は,異所性子宮内膜組織を子宮筋層内に認める疾患であり,月経困難症,過多月経や不妊症の原因となる。子宮外に異所性子宮内膜組織を認める,子宮内膜症の類似疾患である。
性成熟期から更年期にかけて好発し,発症年齢のピークは40歳代である。子宮内膜症や子宮筋腫との合併率が高く,経産回数の増加や子宮内容除去術の既往などによって罹患リスクが上昇する。超音波検査で境界不明瞭な子宮壁の肥厚を呈し,MRI検査のT2強調像でjunctional zoneと連続する辺縁不明瞭な低信号域が筋層内に観察される。
子宮腺筋症の病態および症状は子宮内膜症と類似する点が多く,エストロゲン依存性疾患であるため,子宮内膜症に対して行われる治療が子宮腺筋症にも応用される。疼痛に対しては,まず非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用する。漢方薬は安全性が高く,鎮痛作用や抗炎症作用が科学的に証明されているが,その効果は限定的である。
対症療法が無効な場合はホルモン治療を行う。低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP製剤)は月経困難症に対して有効である。比較的多い副作用として不正出血が挙げられ,重大な副作用として血栓症がある。喫煙者や40歳以上の患者では血栓リスクがあるため,投与は勧められない。なお,長期間連続投与できる製剤が開発された。
ジエノゲストは,卵巣機能を抑制し,子宮内膜の増殖を抑制することで子宮腺筋症による月経随伴症状を改善させる。子宮内膜症の治療薬として開発されたが,「子宮腺筋症に伴う疼痛の改善」の効能・効果が追加された。副作用として,不正出血の頻度が高い。子宮腺筋症患者で子宮が大きい場合や重症貧血の既往がある場合は禁忌となる。
レボノルゲストレル放出子宮内システムは,黄体ホルモンを子宮内に持続的に放出させる薬剤である。わが国では月経困難症と過多月経に対して保険適用となっている。
GnRHアナログは,下垂体からのゴナドトロピン産生を低下させることで,卵巣におけるエストロゲン産生を抑制する。症状の緩和と病変の縮小効果は強いが,低エストロゲン症状による投与期間制限がある。GnRHアゴニストでは,投与初期には一過性のエストロゲン分泌亢進により,過多月経が増悪する場合がある。副作用として,卵巣欠落症状である更年期症状が出現することが多い。また,長期投与により骨量が減少するため,原則として6カ月以上の投与は望ましくない。
経口アンタゴニスト製剤であるレルゴリクスは,GnRHアゴニストと同じく6カ月を超えての使用は推奨されない。しかしながら,flare upが起こらないため,過多月経を主訴とする症例に推奨される。
最重症例には,GnRHアナログに続いてジエノゲストを長期投与する方法がある。
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