黄体機能不全は,不妊や不育,月経周期の短縮や月経前の不正出血などの原因と言われている1)。黄体からのエストロゲンとプロゲステロンの分泌不全により,子宮内膜の分泌期変化が正常に起こらないものを指す。性ステロイドホルモンの分泌は保たれているが,子宮内膜の応答不全があり分泌期変化を起こしていないものは,含まないとしている2)。不妊女性とそうではない女性とを区別できる明確な診断基準がなく,また,治療方針としても確立したものはない。
黄体機能不全の診断に用いられる基準を以下に示す。
①基礎体温(BBT):高温相が10日未満に短縮
②黄体期中期の血中プロゲステロン値:10ng/mL未満(変動があるため,複数回の採血が望ましいとされる)
③子宮内膜日付診:黄体期中期の子宮内膜の分泌期変化を組織学的に診断するものである。実際の日付と組織学的な日付が3日以上ずれているもの
黄体機能不全は不妊症や流産の原因になる可能性があると言われているが,診断基準や治療に関する質の高い研究がない。①の基礎体温は,妊娠が成立した周期では評価が困難であり,③の子宮内膜日付診は,検者による診断の違いなども指摘されている。②については,不妊と診断されていない女性であっても,黄体期の短縮や,黄体期中期の血中プロゲステロン低値がみられることがある。
上記の診断のポイントのうち,不妊症のスクリーニングとして一般的に行われているのは,基礎体温,黄体期中期の血中プロゲステロン値の測定であろう。ゴナドトロピン分泌不全による排卵障害や,高プロラクチン血症,甲状腺機能異常症などによって黄体機能不全を起こしている場合があるため,基礎疾患の有無を確認する必要がある。それらに異常があるようであれば,その疾患の治療を優先する。黄体機能不全の原因となる基礎疾患が見つからない場合は,排卵後に黄体ホルモンの補充を行う。
また,黄体機能不全であっても,不妊などの症状がなければ特に治療の必要はない。
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