消化管ポリポーシスは病理学的に腫瘍性・非腫瘍性に分類され,腫瘍性は腺腫性(「胃ポリープ・胃腺腫」「十二指腸ポリープ・腺腫」の稿を参照)と腺腫・過形成性にわけられ,非腫瘍性はさらに過誤腫性,過形成性,炎症性に分類される。ここでは,クロンカイト・カナダ症候群,Peutz-Jeghers症候群,Cowden病,serrated polyposis syndromeを取り上げる。クロンカイト・カナダ症候群は高齢者に多く,500例超の症例報告がなされているにすぎない世界的に希少な疾患で,わが国からの報告が半数以上を占める。
消化器症状として慢性の下痢(多くは非血性),腹痛,味覚鈍麻があり,皮膚のtriadとして脱毛,皮膚の色素沈着,爪甲萎縮・脱落を認める。ほぼ全例で胃,大腸に発赤したポリープの密集を認める。小腸にも病変を認めるが,皺襞腫大程度のことが多い。食道病変は稀である。蛋白漏出性胃腸症を合併するため浮腫を合併する。胃癌,大腸癌の合併頻度が高い1)。
消化管ポリープは小腸に好発し,腸重積の原因となる。口唇の色素沈着が特徴的である。
顔面の多発性丘疹,口腔内粘膜乳頭腫,消化管ポリポーシスが多発する常染色体優性遺伝性疾患である。若年から男女ともに乳癌のリスクが高い。甲状腺癌,子宮内膜癌の合併のリスクも高い。高率に脂肪肝,脂肪性肝炎および肝硬変を合併し,肝癌を併発することもある。消化器がんの発生リスクは上昇しないが,貧血や蛋白漏出性胃腸症の原因となることがある。
大腸に鋸歯状病変・過形成ポリープが多発する疾患で,自覚症状に乏しい。①S状結腸および口側の5個以上の病変でうち2つ以上は10mmを超える,②20個以上の病変があり5個以上は直腸より近位に分布する,のいずれかを満たすものと定義されている。大腸癌の発生リスクが高い。海外では有病率0.8%との報告があり,頻度が低いわけではない。
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