十二指腸乳頭から下部回腸までの小腸出血は,通常の消化器内視鏡でのアプローチは困難である。小腸出血の原因としては,血管拡張症やデュラフォア病変といった血管性病変,消炎鎮痛薬やクローン病等の炎症性腸疾患に伴うびらん・潰瘍病変,憩室,さらに消化管間質腫瘍(GIST)等の腫瘍性病変等がある。
上部・下部の消化管内視鏡検査で出血性病変が認められないときは小腸出血を考える。まず造影CT(できればダイナミックCT)で病変の局在や性状を確認する。GISTは小腸腫瘍の中では頻度が高く,しばしば出血をきたすが,造影効果が高い。CTで病変が認められれば,バルーン内視鏡(BAE)を施行し,さらに内科的,内視鏡的または外科的治療を行う。CTで病変が検出されなければカプセル内視鏡(CE)を行う。なお,出血後2日以内に内視鏡検査を行うと診断率が高い。CEでも異常を認めないものの,高度の貧血があるなど精査を要する場合はBAEを行う1)。
炎症性の疾患や腫瘍では,基本的には原疾患の治療が重要である。多量の顕性出血があり,CTで腸管内への造影剤漏出が認められる場合は,血管造影下の動脈塞栓術が行われる。血管造影は0.5mL/分以上の出血を検出できるとされる。造影剤漏出が認められない場合や潜在性出血では内視鏡的止血を行う。多くの血管性病変は内視鏡治療の適応であるが,angioectasiaは異時性あるいは同時性に多発することも少なくない。抗血栓薬を使用している場合は休薬が望ましいが,血栓症のリスクがあり,中止困難な場合も少なくない。
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