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過敏性腸症候群[私の治療]

No.5138 (2022年10月15日発行) P.46

福田眞作 (弘前大学学長)

登録日: 2022-10-18

最終更新日: 2024-10-01

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  • 過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)は,器質的異常がないにもかかわらず,慢性的に下痢,便秘などの便通異常,腹痛を繰り返し,致死的ではないが一般人口における有病率が高く,QOL障害が強い疾患である。病態生理としては,内分泌系,神経系を介して,脳と腸が互いに影響を及ぼし合う脳腸相関が重要であるが,近年,腸内細菌叢の変調による腸管粘膜の微小炎症,透過性亢進がIBSの発症,症状悪化と関連することが指摘されている。

    ▶診断のポイント

    便通異常,腹痛の原因となる器質的異常の除外診断を行った上で,機能性消化管障害の国際基準であるRomeⅣ基準で診断する。有病率は女性で1.6倍高く,加齢とともに減少傾向となる。

    【RomeⅣ基準】

    腹痛が最近3カ月間の中の1週間のうち,少なくとも1日以上を占め,以下の2項目以上の特徴を示す。

    ①排便に関連する,②排便頻度の変化に関連する,③便形状(外観)の変化に関連する

    期間としては少なくとも6カ月以上前から症状があり,最近3カ月間は上記の基準を満たしていること。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    血液検査,画像診断などで治療効果を評価するのは困難であり,治療目標としては,患者自身が腹痛,便通異常の改善を自覚し,QOL障害が改善されることを目標とする。診療ガイドラインでは,3段階の治療フローチャートを提示している。

    まずは,検査結果,診療内容に関して医師が十分な説明を行うことが重要である。病態として心理的要因も重要であり,良好な医師・患者関係が構築されることが治療効果につながる。

    第1段階では,食事療法として症状を誘発する油脂,香辛料を控えることを指導する。また,低FODMAPダイエット(フルクタン,ガラクタン,ポリオール,果糖,乳糖などの糖類を含む食品の制限)の有効性も示されている。便秘型では高繊維食が有効である。また,運動療法や生活リズムの調整など,生活習慣改善指導を行う。

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