株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

経鼻用スコープを,経口で使用する際の注意点

No.5144 (2022年11月26日発行) P.50

河合 隆 (東京医科大学消化器内視鏡学分野 主任教授・部長)

登録日: 2022-11-29

最終更新日: 2022-11-21

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

消化器内視鏡の経鼻用スコープを,経口で使用する際の注意点についての質問です。
検査時に患者が「細いスコープ」を希望することがあります。しかし施設によっては,経口用の細径スコープがなく,経鼻用スコープで代用することがあります。本来は経口用の細径スコープを用いるべきなのでしょうが,経鼻用を使うと操作面でてこずることがあります(特に挿入時)。スコープが柔らかいためと思いますが,その点も含めてご教示頂けたら幸いです。(東京都 S)


【回答】

【食道入口部への挿入のしづらさや操作性など,特徴を十分把握してから使用する】

経鼻内視鏡として用いられている細径スコープの画像のハイビジョン化1)に伴い,細径スコープを経口挿入する先生方が増加しています。細径スコープを経口挿入するケースは,2つあります。1つは経鼻挿入できず経口挿入に切り替える場合,もう1つは最初から経口挿入する場合になります。

(1)麻酔について

経鼻挿入から経口挿入に切り替える場合には,鼻腔麻酔薬が咽頭・喉頭に到達しているため,咽頭に麻酔薬を少量追加すればよいと思われます。一方,最初から細径スコープを使用して経口挿入する場合には,各施設における通常の経口麻酔の方法で行って下さい。

(2)食道入口部挿入時のポイント

原則は,通常径スコープの経口挿入と同様でよいと思われます。ただし,経鼻挿入に比べると,細径スコープといえども経口挿入の場合には,マウスピースをくわえることにより嚥下運動がしにくくなり,少々,食道入口部へ挿入しづらくなります。

通常,嚥下時は舌骨上筋群の収縮により,喉頭全体が上前方に移動し,食道入口部が漏斗状に垂直となり,開大します。このため,内視鏡挿入時でも嚥下運動をすると,挿入が容易になります。しかし通常,マウスピースを使用すると,開口に伴いこの運動が障害され,嚥下困難となります。細径スコープが通過するマウスピースを小児用に変更することが可能ならば,開口する幅が狭くなることで嚥下運動障害が小さくなり,挿入しやすくなります。

(3)スコープの操作性に関して

細径スコープは通常径スコープに比べ,操作性は若干劣ります。注意すべきポイントが3つあります。1つめは,十二指腸下行脚に挿入する際に,追従性が劣ることがあります。2つめとして,胃粘液の洗浄の際に右手をスコープから離すと視野がずれますが,細径スコープのほうがその度合いが大きくなります。3つめとして,生検を行う際に反転・Jターン操作をしていると,鉗子の影響を受けて屈曲角度が変わり組織採取が困難になる場合があるので,注意して下さい。

以上,細径スコープの各特徴を十分把握した上で,ご使用頂くことが望ましいと思います。

【文献】

1)Kawai T, et al:Dig Endosc. 2022;34(6):1110-20.

【回答者】

河合 隆 東京医科大学消化器内視鏡学分野 主任教授・部長

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top