【食道入口部への挿入のしづらさや操作性など,特徴を十分把握してから使用する】
経鼻内視鏡として用いられている細径スコープの画像のハイビジョン化1)に伴い,細径スコープを経口挿入する先生方が増加しています。細径スコープを経口挿入するケースは,2つあります。1つは経鼻挿入できず経口挿入に切り替える場合,もう1つは最初から経口挿入する場合になります。
経鼻挿入から経口挿入に切り替える場合には,鼻腔麻酔薬が咽頭・喉頭に到達しているため,咽頭に麻酔薬を少量追加すればよいと思われます。一方,最初から細径スコープを使用して経口挿入する場合には,各施設における通常の経口麻酔の方法で行って下さい。
原則は,通常径スコープの経口挿入と同様でよいと思われます。ただし,経鼻挿入に比べると,細径スコープといえども経口挿入の場合には,マウスピースをくわえることにより嚥下運動がしにくくなり,少々,食道入口部へ挿入しづらくなります。
通常,嚥下時は舌骨上筋群の収縮により,喉頭全体が上前方に移動し,食道入口部が漏斗状に垂直となり,開大します。このため,内視鏡挿入時でも嚥下運動をすると,挿入が容易になります。しかし通常,マウスピースを使用すると,開口に伴いこの運動が障害され,嚥下困難となります。細径スコープが通過するマウスピースを小児用に変更することが可能ならば,開口する幅が狭くなることで嚥下運動障害が小さくなり,挿入しやすくなります。
細径スコープは通常径スコープに比べ,操作性は若干劣ります。注意すべきポイントが3つあります。1つめは,十二指腸下行脚に挿入する際に,追従性が劣ることがあります。2つめとして,胃粘液の洗浄の際に右手をスコープから離すと視野がずれますが,細径スコープのほうがその度合いが大きくなります。3つめとして,生検を行う際に反転・Jターン操作をしていると,鉗子の影響を受けて屈曲角度が変わり組織採取が困難になる場合があるので,注意して下さい。
以上,細径スコープの各特徴を十分把握した上で,ご使用頂くことが望ましいと思います。
【文献】
1)Kawai T, et al:Dig Endosc. 2022;34(6):1110-20.
【回答者】
河合 隆 東京医科大学消化器内視鏡学分野 主任教授・部長