胃・食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)のうち,内視鏡検査で食道下端に粘膜傷害を認める状態を言う。粘膜傷害を認めないGERD(すなわちnon-erosive reflux disease:NERD)の原因は多岐にわたるが,粘膜傷害を認めるGERD〔すなわち逆流性食道炎(reflux esophagitis:RE)〕では,胃酸の食道内逆流が主因と考えてよい。
診断は,内視鏡検査で食道下端の粘膜傷害を認めることで形態学的になされ,症状の有無は問わない。したがって,スクリーニング検査で偶発的に発見される例も多い。
典型的な症状は,胸焼け,呑酸で,こうした患者に内視鏡検査にて食道粘膜傷害を認めれば,症状の原因と考えてよい。
REによる食道粘膜傷害の内視鏡診断に関しては,食道の粘膜欠損(びらん,潰瘍)の広がりで重症度を分類したロサンゼルス分類(grade A~D)が広く使用されている。REの治療に関しては,食道粘膜傷害の程度に関して軽症(grade AまたはB)と重症(grade CまたはD)にわけて考えるとよい。
軽症REで症状がなければ(偶発的に発見された場合など),特に治療介入の必要はないが,症状があれば治療対象になる。重症REであれば,出血,狭窄などの合併症予防もあり,症状の有無にかかわらず治療対象となる。
REの治療では,必要かつ十分に酸分泌を抑制することが基本で,proton pump inhibitor(PPI),またはpotassium-competitive acid blocker(P-CAB)による初期治療を開始する。初期治療で投与される用量間の比較では,P-CAB〔例:タケキャブⓇ20mg(ボノプラザンフマル酸塩)〕は,PPI〔例:ネキシウムⓇ20mg(エソメプラゾールマグネシウム水和物),パリエットⓇ10mg(ラベプラゾールナトリウム),タケプロンⓇ30mg(ランソプラゾール)〕より酸分泌抑制効果は強力である。タケキャブⓇ20mgは現在使用できる酸分泌抑制薬の中で最も強力であると考えてよい。
一方で,GERDは生活習慣と関連した病態であり,これらの薬物療法に並行して,生活指導を適宜行っていく。有効性が示されている生活指導として,禁煙,減量,遅い夜食の回避,就寝時の頭位挙上がある。
軽症例では,必ずしも維持治療は必要ではない。患者の症状に合わせて,PPIまたはP-CABを服薬するオンデマンド治療,または初期治療のあといったん休薬して,症状再燃時に投薬を再開すること(間欠治療)も考慮されてよい。
重症例では,再発率が高いこと,また合併症予防の観点から,PPIまたはP-CABによる長期の維持治療が推奨される。長期維持療法に関して,PPI,P-CABの安全性は比較的高いと考えられるが,まったく副作用がないというわけではないので,必要・十分な用量で対処すべきである。
一方で,通常のPPIで長期維持療法を受けているRE患者の中で,一定数(1/3程度)は,症状は軽快したものの残存していることがあり,適宜,残存症状の有無を聴取して,薬剤の変更,用量調整を行う必要がある。
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