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無月経・乳汁漏出症候群/PRL分泌症候群[私の治療]

No.5153 (2023年01月28日発行) P.56

村上 節 (滋賀医科大学産科学婦人科学講座教授)

辻 俊一郎 (滋賀医科大学産科学婦人科学講座准教授)

登録日: 2023-01-26

最終更新日: 2023-01-24

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  • 無月経の原因のひとつとして,高プロラクチン血症がある。分娩後の授乳期に乳汁分泌を促す作用を持つプロラクチンは排卵抑制作用も有しており,無月経を呈する状況には乳汁漏出を伴うケースが含まれる。高プロラクチン血症の原因は多岐にわたり,医療面接を含む鑑別診断が重要である。

    ▶診断のポイント

    無月経の鑑別診断時の性腺ホルモン検査では,血清プロラクチン値も測定する。ただし,プロラクチンは日内変動を認めるので,午前中,またストレスの少ない環境下での検査が勧められる。測定系によって正常値に若干の相違があるので,自施設の正常値を把握しておくことが必要である。乳汁漏出の有無は,乳腺を圧迫し乳頭を絞ることを両側で確認する。男性医師の場合は,助産師あるいは看護師に確認を依頼するとよい。

    乳汁漏出を認める場合には,抗うつ薬の選択的セロトニン再取込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(serotonin noradrenalin reuptake inhibitor:SNRI),抗潰瘍薬のH2受容体拮抗薬,メトクロプラミドなどの服用の有無を尋ねる。甲状腺機能の低下が原因となることもあるので,むくみ,寒がり,皮膚の乾燥などに注意を払うほか,血清甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの値も測定する。

    頭痛や視野障害を伴う場合や血清プロラクチン値が100ng/mLを超える高値の場合は,下垂体腫瘍の可能性があることを忘れてはならない。必要に応じて,下垂体のMRI検査を実施する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    最終分娩から1年以上を経て授乳中の場合には,断乳を勧める。精神神経科や内科からの処方による薬剤性の場合には,当該科の主治医と薬剤の中止,減量または変更が可能か否か相談する。甲状腺機能低下症が原因であれば,内分泌内科とも相談の上,甲状腺ホルモンの補充療法を行う。下垂体腫瘍を認める場合には,脳神経外科と相談の上,内科的治療と外科的治療の選択を判断する。

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