閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)は無呼吸中にも呼吸努力を伴い,通常いびきが存在する。上咽頭から喉頭までの間に何らかの原因で狭小化が起こり,睡眠中の吸気時に完全な閉塞を起こすと無呼吸になり,不完全な虚脱を起こした場合,低呼吸になる。その結果,間欠的低酸素血症,高二酸化炭素血症や睡眠の分断をもたらす。OSAの頻度は高く,2010年以降の報告では,国内コホート研究(34歳≧対象)で軽症の頻度は,男性では81.0%,女性では閉経前25.1%,閉経後60.2%,海外からの報告(40歳≧対象)も男性83.8%,女性60.8%である。小児におけるOSAの頻度は,客観的指標を用いた確定診断調査により1.0~5.8%,保護者へのアンケート調査により4.0~11.0%と推定されている。
AHI(無呼吸低呼吸指数)≧5で,日中の過度の眠気などの臨床症状の合併や高血圧・冠動脈疾患などの既往がある場合,あるいはAHI≧15でOSAと診断する。
AHI≧1で,いびきや睡眠中の呼吸努力,日中の行動や学習問題などがみられた場合,OSAと診断する。小児では臨床症状に注意を要するため,保護者に睡眠動画記録を依頼し,不自然な睡眠体位,胸郭の陥没,胸部と腹部の動きの非同期などの所見を確認する。標準体型と比べて低身長,低体重であることや夜尿の合併なども参考になる。
OSAの病因・病態生理には4つの要素(解剖学的上気道径の狭小化,呼吸調節系の不安定性,上気道代償性低下,低い覚醒閾値)が関連し,要素の様々な組み合わせでphenotypeが示される。重症度,要因,患者希望に応じて治療の目的を明確にし,根治治療,救済治療,支持療法と,治療法を使いわける。アレルギー性鼻炎の合併がある場合,鼻腔通気の不良による鼻呼吸障害ならびに睡眠の質への影響が生じる点に特に注意している。
アデノイドや口蓋扁桃肥大が原因となる場合が多い。ステロイド点鼻やロイコトリエン受容体拮抗薬の内服など,保存的加療を先行した後に手術を実施する,いわゆる,段階的治療アプローチを基本とする。また,ハイリスク児(2歳未満,肥満,神経筋疾患,ムコ多糖症,顎顔面形態異常など)の場合は要因に合わせ個別治療を行う。
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