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東北薬科大の医学部設置構想を選定 - 運営協議会立ち上げなど条件を付与 [文科省審査会]

No.4715 (2014年09月06日発行) P.9

登録日: 2014-09-06

最終更新日: 2016-11-17

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【概要】東北地方に1校に限定して認可する医学部新設について、文部科学省の審査会は8月28日、「東北医科薬科大学」の構想を条件付きで選定した。


設置認可申請、大学設置・学校法人審議会の審議・答申、文科相の認可を経て早ければ2016年4月に開学。1981年の琉球大の医学部新設以来、35年ぶりとなる。
文科省の「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」(遠藤久夫座長)は、昨年12月の復興庁・文科省・厚労省の「基本方針」を踏まえ、応募のあった国際復興記念大学(応募主体=脳神経疾患研究所)、東北医科薬科大学(東北薬科大学)、宮城大学(宮城県)の3つの構想について、6月から審査を進めてきた。
審査に当たっては、(1)東北地方の将来の医療ニーズを踏まえた教育、(2)教員や医師、看護師の確保に際し引き抜き等で地域医療に支障を来さないような方策、(3)大学と地方公共団体が連携し、卒業生が東北地方に残り地域の医師不足の解消に寄与する方策、(4)将来の医師需給等に対応して定員を調整する仕組み─の4つの留意点を中心に議論。応募者、関係者からヒアリングも行った。

●教員・医師公募の基準策定を
審査会は、東北医科薬科大について、症例数・患者数の確保に有利な仙台市内に附属病院を持ち、被災地である石巻市にサテライトを設置するなど被災地の地域・災害医療に配慮したカリキュラム内容や、定員120人のうち70人が学費全額または半額補助の奨学金の対象になっている点などを評価し、その構想を選定することが適切と判断。
一方で、医師不足地域における実習や卒後の医師派遣について明確に示されていないなどの意見もあったことから、実施条件として、「選定後速やかに、東北各県・各大学、関連教育病院、地元医療関係者の協力の下、運営協議会(仮称)を立ち上げ、教員確保・地域定着策をはじめとした構想の実現・充実のために必要な協議を開始すること」「教員や医師、看護師等の公募を行うに当たり地域医療に支障を来さないことを担保する具体的な基準・指針を定めて対応すること」など7項目を付与。国に対し、これらの条件に適切に対応できていると認められるまでは設置認可を行わないよう求めている。
なお、選定から外れた宮城大学については、知事の熱意や定員60人全員が奨学金の対象であることなどが評価されたが、教育内容・体制について具体性に欠けること、医師や教員確保の具体策がないこと、附属病院における患者数確保や経営の見通しが定まっていないことなどが問題とされた。
国際復興記念大学は、福島県に立地し、原子力災害からの復興に真剣に取り組んでいる点が評価されたが、県や県立医大との連携が不十分で、卒後の定着策の効果が十分期待できないとされ、財務面の不確実性を指摘する声も多かった。

【記者の眼】選定結果について日本医師会の横倉義武会長は同日見解を発表。「医師不足は数の問題ではなく、偏在解消が課題」という姿勢を改めて強調した。医学部新設に伴う医師の引き揚げについては医療現場でも懸念の声が強く、4つの「留意点」が厳守されるか注視が必要だ。(A)

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