わが国の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2022年版)」では、糖尿病(DM)例のLDL-C値を原則として「<120 mg/dL」まで低下させるよう推奨している。
DM例に限らずLDL-C低下の第一選択薬はスタチンだが、メトホルミンがこのスタチンによるLDL-C低下作用を増強する可能性が明らかになった。デンマーク国立血清研究所のGiulia Corn氏らが大規模観察研究の結果として5月6日、American Heart Journal誌で報告した。
解析対象となったのはデンマーク在住で、シンバスタチンかアトルバスタチンの服用を開始した8万9006例である。公的レジストリから抽出した。年齢中央値は62歳、女性が52%を占めた。スタチン服用前LDL-C平均値は151 mg/dL、開始後平均値は85 mg/dLだった。
これら8万9006例において、スタチン開始後のLDL-C低下率を、各種併存症の有無、併用薬の有無別に検討した。スタチン開始前LDL-C値は服用開始前12週間以内、服用後LDL-C値は開始後2~24週間以内の測定値とした。
・併存症がスタチン服用後LDL-C低下に及ぼす影響
スタチンによるLDL-C低下作用に、臨床上意味のある影響(低下率が5%以上変動)を与えた併存症はなかった。
・併用薬がスタチン服用後LDL-C低下に及ぼす影響
スタチンによるLDL-C低下作用に、臨床上意味のある影響を与えていた併用薬は、血糖降下薬のみだった。
そこで血糖降下薬間で比較すると、メトホルミン単剤服用群(80%)のスタチン開始後LDL-C低下率増強幅は5.14%、メトホルミンと他剤併用群(16%)でも6.09%となり、メトホルミン非服用群(4%)の2.75%よりも有意に高値となっていた。
Corn氏らはメトホルミン併用に伴うスタチンLDL-C低下作用の増強を、スタチン倍量への増量に等しいと評価。メトホルミン併用に伴うLDL低下作用増強の正確な機序は不明としながらも、スタチン服用に伴い上昇するPCSK9濃度[Nozue T. 2017] を、メトホルミンは低下させる点 [Die H, et al. 2021] に言及している。
本研究はデンマーク独立研究基金ならびにブラザーズ・ハルトマン財団、財団法人医学振興財団から資金提供を受けた。