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薬剤性腸炎[私の治療]

No.5238 (2024年09月14日発行) P.43

西田淳史 (滋賀医科大学消化器内科講師)

安藤 朗 (滋賀医科大学消化器内科教授)

登録日: 2024-09-11

最終更新日: 2024-09-10

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  • 薬剤性腸炎とは,薬剤の投与により腸管にびらんや潰瘍などの炎症性変化が生じ,それにより腹痛,下痢,血便などの臨床症状をきたす疾患を指す。抗菌薬投与後に起こる偽膜性腸炎と出血性腸炎が高頻度であるが,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)起因性腸炎,collagenous colitisや抗癌剤起因性腸炎などもある。近年では免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)などもある。

    ▶診断のポイント

    診断には,発症前からの薬剤使用歴の確認,感染性腸炎の否定,薬剤中止後の症状改善と腸病変改善の確認,などが必要である。

    抗菌薬による出血性腸炎の原因薬剤は合成ペニシリンが最も多く,内服開始から数日後に下痢,血性下痢,腹痛で急性発症する。最近,便培養でKlebsiella oxytocaの検出率が高いと報告されているが,診断に必須ではない。偽膜性腸炎では,下痢を呈していること,Clostridioides difficile(CD)の便中トキシン陽性もしくはトキシン産生性CDの分離,もしくは内視鏡検査で偽膜性腸炎を呈すること,が重要である。偽膜を形成しない非偽膜性腸炎では,細菌学的検査も加えて総合的に診断する必要がある。

    NSAIDs起因性腸炎は,内視鏡所見から潰瘍型と腸炎型に,さらに潰瘍型は膜様狭窄合併の有無により分類されるが,非特異的な所見のため,診断においてはNSAIDsの使用中止による病変の改善の確認が最も重要である。collagenous colitisはNSAIDsやプロトンポンプ阻害薬(PPI)によるものが多く,内視鏡所見では幅の狭い境界明瞭な縦走潰瘍などがみられる。

    抗癌剤起因性腸炎はフルオロウラシル誘導体によるものが多く,核酸阻害作用による粘膜傷害でしばしば下痢が起こるが,炎症が強ければ出血,虚血,壊死をきたす。irAE腸炎は,内視鏡所見では,血管透見像の消失,発赤,浮腫状粘膜,びらん,潰瘍など潰瘍性大腸炎に酷似し,病理組織学的に陰窩のねじれ,陰窩膿瘍や上皮細胞アポトーシスなどを認める。

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