メッケル憩室は胎生期の卵黄腸管の遺残した真性憩室であり,有病率は全人口の約2%とされ,男性に多い。通常,バウヒン弁から口側100cm以内の腸間膜付着部反対側に存在し,約25%に異所性組織の迷入を認める。メッケル憩室の多くは無症候性であるが,異所性胃粘膜からの出血,憩室を先進部とする腸重積や腸閉塞,憩室炎などを引き起こすことがある1)。
上・下部消化管内視鏡を行っても原因不明の下血や腹部症状を呈している場合,成人例であってもメッケル憩室を鑑別疾患に挙げることが重要である。メッケル憩室の診断には,一般的に腹部CT,小腸内視鏡,99mTc-シンチグラフィーなどが有用とされる。他方,小腸カプセル内視鏡での検出率は低いとされており注意が必要である。疑った際には,複数のモダリティを組み合わせて診断することが肝要である1)。
無症状の場合は経過観察となる。なお,他の理由で行われた手術の際にメッケル憩室が発見された場合には,将来的な合併症を防ぐために切除されることもある。少量の出血であれば酸分泌抑制薬を投与する場合もあるが,原則的に憩室出血や憩室炎を発症した場合は,切除術が考慮される。
症候性メッケル憩室の場合,外科的切除が第一選択となる。近年は技術の進歩により腹腔鏡手術の報告が増えてきている。切除範囲は,①憩室切除,②楔状切除,③小腸部分切除などが選択肢に挙がるが,症状の原因となる異所性組織を残さないことが重要である2)。
上・下部消化管内視鏡を行っても原因不明の下血や腹部症状を呈している場合には,上記の検査法を行える施設へのコンサルトが望ましい。
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