【質問者】
塩田敦子 香川大学医学部健康科学教授
【漢方薬は有効。誤治に注意し,漫然と投与しないことが大切である】
メンタルヘルスのサポートや妊娠に伴うトラブルに対して,医療の介入を必要とする妊産婦が増えているのが現状です。微小循環を改善して冷えを取り,「心身一如」で治療できる漢方薬は,妊産婦の心身の不調に有効で「妊婦だから我慢する」から解放してくれます。
基本的には妊婦は虚証で,血虚・瘀血・水滞・気鬱ととらえます。妊娠前の証(タイプ)や現時点の病態,妊娠の時間軸も加味して漢方薬を選択します1)。誤治(証を間違う)に注意し漫然と投与しないことは,妊産婦でも同じです。不育症や妊娠高血圧症候群に使う柴苓湯は黄芩を含み,肝機能障害や肺線維症の副作用があるため,妊婦の場合はより注意が必要です。大黄,牡丹皮,桃仁などを含む駆瘀血剤は流早産につながるとして慎重投与ですが,エキス製剤には䗪虫(ゴキブリ科)や水蛭(ヒルド科)をはじめとする,妊婦に禁忌とされている生薬は含まれていません。妊娠初期は催奇形性を考慮する必要がありますが,悪阻,頭痛,下痢,不育症などの症状で使用します。妊婦によく使われる漢方薬の催奇形性・生殖発生毒性を調べた論文は1980年代に多く報告されていますが2),妊娠初期は特に必要最小限の使用を心がけることが大切です。
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