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骨盤臓器脱[私の治療]

No.5241 (2024年10月05日発行) P.44

近藤英司 (三重大学医学部産科婦人科教室准教授)

吉田健太 (三重大学医学部産科婦人科教室講師)

登録日: 2024-10-08

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  • 骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse:POP)は,骨盤底筋を含む骨盤底支持機構が加齢に伴い脆弱化して発症するとされており,臓器下垂による疼痛・下部尿路症状・排便症状・性機能に大きな影響を与えるQOL(quality of life)疾患である。生涯有病率が9人に1人と高頻度で,超高齢社会を迎えた現代において,今後さらに増加すると考えられる。

    ▶診断のポイント

    POPは,膀胱瘤,子宮脱,直腸瘤,小腸瘤,腟断端脱に分類される。内診により脱出している臓器を診断するPOP-Qシステムが最も診断で重要である。QOLの評価は骨盤底困窮度質問票短縮版(Japanese pelvic floor distress inventory short form 20:J-PFDI-20)が有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    POP治療は,保存的治療および外科的治療がある。保存的治療は,①骨盤底筋体操,②腟内装具(ペッサリーなど),③サポート下着がある。外科的治療には,DeLanceyのレベル分類が有効である。子宮頸部および後腟円蓋部の仙骨方向への支持をレベル1,腟上部2/3の骨盤壁への支持をレベル2,肛門挙筋などの骨盤底筋と会陰体による出口部への支持をレベル3とする。経腟手術と経腹手術(ロボット手術・腹腔鏡手術を含む)において,それぞれメッシュを使用する方法と使用しない方法がある。

    治療方針の決定には,POP-Qを用いたPOPの程度,J-PFDI-20などを用いたQOL評価だけでなく,患者の状態(年齢,合併症,現在の性交渉の有無,患者の希望)などを総合的に評価し,治療を選択する必要がある。保存的治療は,根治治療ではないため,高齢者や周術期リスクの高い患者に選択することが多い。一方で外科的治療は根治治療が可能であるが,周術期の合併症があることを忘れてはならない。当院では,保存的治療で開始し,症状の改善が乏しい場合に,外科的治療を行うことを基本方針としている。

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