顕微鏡的大腸炎は,膠原線維性大腸炎(collagenous colitis)とリンパ球性大腸炎(lymphocytic colitis)との2つに大別される。下痢症状を呈し,内視鏡的所見に乏しいが,生検による病理検査にて特徴的な所見を認めることが,過敏性腸症候群との鑑別となる。
慢性,持続性に頻回の水様性下痢を認める。切迫性排便,夜間排便,腹痛,体重減少を伴うこともある。
下部消化管内視鏡による生検にて病理学的に,リンパ球性大腸炎では上皮細胞100個中上皮内リンパ球が20細胞以上認められ,膠原線維性大腸炎では粘膜上皮直下のcollagen bandの肥厚(>10μm)を認める。下部消化管内視鏡では異常所見がないことが多く,非特異的であるが粘膜裂傷や縦走潰瘍を呈することもある。内視鏡的所見が正常でも各部位からの生検を行うことが望ましい。内視鏡施行の判断として,過敏性腸症候群との鑑別に便中カルプロテクチン検査が有用である。高値であれば炎症性疾患を疑い,内視鏡検査を行う。
プロトンポンプ阻害薬(PPI),非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),アスピリン製剤,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など。
現在内服している薬剤を詳細に聴取して,可能性のある薬剤があれば中止する。また,カフェイン,アルコール,乳製品の摂取を制限するなどの食事指導を行う。改善が認められない場合には,下痢の対症療法として止痢薬を使用する。対症療法でも改善しない場合は,抗炎症作用の薬剤を使用する。ネットワークメタアナリシスでは,寛解導入においてブデソニド9mgが最も治療効果が高いと報告されている。一方で,メサラジン製剤の治療効果はエビデンスによると非常に低いと評価されている。寛解維持に関しては,ブデソニド6mgの効果を認めているが有意ではなく,さらなる検討が必要である。薬物治療に反応せず,脱水や低カリウム血症,低栄養となる場合には,中心静脈栄養や手術療法(大腸全摘術や回腸人工肛門造設術など)を考慮する。
ケースシリーズでは,アザチオプリンや抗TNFα抗体製剤,抗インテグリン製剤のベドリズマブなどの有効性が報告されている。
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