(概要) 各大学の医学教育を第三者機関が認証・評価する仕組みがスタートする。いわば「黒船来航」ともいえる認証・評価制度が日本の医学界に与える影響は。
医学教育の認証・評価を行う第三者機関として「日本医学教育評価機構(JACME)」(高久史麿理事長)が12月1日に発足した。
発足の契機は、医学部のいわゆる「2023年問題」に対応するためだ。米国での臨床研修を希望する海外の医学部卒業生は、米国のECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)に申請した上で、米国の医師国家試験を受験する必要がある。ところが2010年にECFMGは「2023年以降、国際基準で認証・評価を受けた医学部の卒業生のみにECFMGの申請資格を与える」と通告。これを受け、全国医学部長病院長会議は認証・評価を行う組織の設立に向け動き出した。
●「医師全体の教育に影響」
日本医学教育評価機構は全国の医学部80校と日本医師会、日本医学会連合、日本医学教育学会で構成。2016年度中に国際基準に則った団体として世界医学教育連盟からの認定を受ける見込みだ。2017年度からは日本の医学部の認証・評価を年間10~12校で実施。2023年までには全80校が認証・評価を受けられる計算だ。
新たな認証・評価制度の導入で大学に求められるのが、臨床実習の充実。機構の評価基準では最低70週以上の実習時間が必要で、学生に対する病床数が少ない地方の国立大や、医師国家試験に向けた「予備校化」している大学は変化を迫られる。
12月24日に開かれた発足会見で、理事長の高久氏は「日本医学教育評価機構の発足は、我が国の医学教育の歴史の中で最も画期的な出来事」と強調し、「日本の優れた医学教育を世界に示す良い機会であると同時に、各大学が現状に甘んじることなく医学教育の質を継続的に高め、改善に取り組む良い機会だ」と挨拶。日本医学会連合会長の立場からも「専門医教育や初期研修も卒前教育が基本であり、機構の今後の活動が医学教育だけではなく、日本の医師全体の教育に大きな影響を与える」との考えを示した。
●評価者の標準化が課題
医学部の認証・評価を実際に担うのは、機構の総合評価部会に設けられた評価委員会だ。評価委員会に所属する12の評価チームが医学部の視察などを基に報告書をまとめる。評価チームのメンバーは現在、医学部長や医学教育の専門家であることを要件に各医学部から推薦を募っており、計約100人となる予定。認証・評価は7年ごとに実施・更新する。
総合評価部会の下には評価委員会のほか、評価者研修委員会や基準・要項検討委員会も設置。機構の理事で総合評価部会長に就任した奈良信雄氏は、会見で「評価者の標準化が課題だ」と説明した。
【記者の眼】発足会見では副理事長の伴信太郎氏(日本医学教育学会理事長)が「日本の医学教育は中から改革しにくい。外からの評価が入ると改革ができる」と述べ、教育の業績への評価を求める場面もあった。充実した教育が評価される仕組みを期待したい。(K)