▼6月に成立した改正医療法で、臨床研究中核病院が「国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的な役割を担う医療機関」に位置づけられた。厚労省では来年4月の施行に向け、承認要件の取りまとめが大詰めに差し掛かっている。11月27日に開かれた検討会では、承認要件の骨子案が議論された。
▼承認要件は「実施体制」「実績」「施設・人員」で一定の基準を満たすことが想定されている。実施体制は、管理体制(ガバナンス)、臨床研究支援体制、データ管理体制、倫理審査体制、利益相反管理体制などの計8要件。実績では、治験や介入・侵襲を伴う臨床研究を計画立案し、実施する能力などの計4要件。施設要件は、内科など15診療科のうち、10以上を標榜する必要があるほか、400床以上を対象とする。人員については、臨床研究に従事する常勤医の複数配置に加え、臨床研究コーディネーター、データマネジャー、生物統計家などの配置も求めている。
▼中でも重要なのは、相次ぐ臨床研究の不適正事案への対応として、不正を未然に防止し、適切な体制を確保するためのガバナンスだ。要件では、承認申請時に、過去の不適正事案の有無のほか、事案があった場合には事実関係や再発防止策の報告を求める。承認後も、病院長をトップとする会議を設置、外部委員で構成する第三者委員会でガバナンスを評価する仕組みとする方針だが、果たして十分だろうか。
▼厚労省担当官は検討会で、ディオバン問題を例にとった場合、論文のデータ不正などが確認された4大学のうち、調査継続中の慈恵医大は保留扱いとする一方、調査結果を公表し、再発防止策をまとめた千葉大、滋賀医大、京都府立医大については受理し、承認審査を行う社会保障審議会医療分科会に送るとの認識を示した。これを受け、同分科会の委員も務める楠岡英雄座長は「特殊な分野なので医療分科会だけでは判断が難しい部分もある」と懸念した。検討会で複数委員から指摘のあったように、不適正事案への対策が講じられているかなど、申請段階で厚労省が検証する必要があるのではないか。
▼臨床研究中核病院は患者申出療養制度(仮称)の拠点となることが決まっている。同制度の創設は現行の先進医療は実施機関が少ないことから保険外併用療養の間口を広げる狙いがある。患者利益を考えると一定の施設数を確保する必要はあるが、間口を広げることを優先するあまり、結果として患者の不利益につながることのないような制度設計が必要だ。