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医学部新設推進派の覚悟が問われる [お茶の水だより]

No.4766 (2015年08月29日発行) P.9

登録日: 2015-08-29

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▼「申し訳ないが歯学部のようになりたくない」との発言も飛び出した。医学部新設構想への対案として、日本医師会と全国医学部長病院長会議が医師偏在解消に向けた提言の骨子を発表した会見でのことだ。
▼提言の骨子では、大学が全医師の異動を生涯把握する「医師キャリア支援センター」が、キャリア支援と偏在解消を一体的に担う方針を打ち出している。この構想はいわば、かつて医局が担っていた機能の復活ともいえるだろう。新臨床研修制度の副作用として、医師の地域偏在や診療科偏在が加速したとの指摘もある。
▼日医の本気度がうかがえるのは、「医師不足地域での勤務経験を医療機関の管理者の要件にする」とした点だ。骨子の趣旨説明には、「課題解決には医師自らが新たな規制をかけられることも受け入れなければならない」「強い危機感の下、相当の覚悟をもって本提言を取りまとめた」との文言が並ぶ。この箇所について日医の中川俊男副会長は冒頭の発言を述べ、新設校が増えて混乱を招いた歯学部の二の舞にはなりたくないとの考えを示した。医療界内部からの反対も覚悟で提案したという。
▼提言の詳細については近く発表予定とされているが、仮にこの提案が実現したとして、現行の医療機関管理者に今後、医師不足地域での勤務が求められるとは現実的に考えにくい。しわ寄せを受ける若手医師からは反発が出るだろう。
▼中川副会長は「医学部新設推進派は『医師の絶対数の手当ては終わり、(問題は)偏在の解消だ』という問い掛けに一切答えていない」と指摘した。これから新たな医学部を作るのであれば、医師偏在問題の議論は避けられないはずだ。医学部新設反対派の「覚悟」に、推進派がどう応じるかが問われている。

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