▼新専門医制度を巡り、医療偏在を引き起こす懸念から混乱が続いている。改めて、なぜ新制度をスタートさせることになったのかを振り返る。
▼直接のきっかけは厚労省「専門医の在り方に関する検討会」(座長=高久史麿日本医学会会長)が2013年にまとめた報告書だ。ここでは、「現在の専門医制度は学会が乱立して認定基準が統一されておらず、国民に分かりやすい仕組みになっていない」との問題を提示。その上で、「患者から信頼される医療を確立するために専門医制度の見直しが必要」と指摘し、(1)専門医の認定を中立的第三者機関が実施、(2)基本領域とサブスペシャルティの二段階制、(3)第三者機関は研修プログラムの評価・認定、研修施設の実地調査を実施、(4)総合診療専門医を基本領域に位置づけ─などを提言した。
▼実は報告書が発表される以前にも、同様の提言を医療界が示している。1つは、日本専門医機構の前身である日本専門医制評価・認定機構(池田康夫理事長)の「専門医制度の基本設計」(2010年)、もう1つは日本学術会議「医療のイノベーション検討委員会」(桐野高明委員長)の要望書(2008年)だ。本誌は両トップの対談を2009年に実施(No.
4437)。ここでも、国民に信頼される専門医制度を確立するために第三者機関が専門医を評価する仕組みが必要との認識が共有されている。
▼新専門医制度が地域医療の混乱を引き起こす事態は避けなければならない。同時に、国民に信頼される専門医制度を目指す新制度の理念も、プロフェッショナルオートノミーの一環として忘れてはならないだろう。日本専門医機構の新体制は難しい舵取りを迫られるが、新専門医制度と地域医療の確保が共存できる道を追求してほしい。