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月経前症候群の治療

No.4780 (2015年12月05日発行) P.59

望月善子 (獨協医科大学医学部産科婦人科教授/ 女性医師支援センター センター長)

登録日: 2015-12-05

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)の患者は多彩な症状を訴えるため,治療に苦慮することが少なくありません。特に怒りやすいなどの情緒不安定と腹痛などの身体的症状を抱える患者を,どのように治療していけばよいか,いつも悩んでいます。低用量経口避妊薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI),漢方薬などを試行錯誤しながら使うことが多いのですが,系統的な治療法はないでしょうか。また,複数の薬剤の併用法などについても併せて,獨協医科大学・望月善子先生のご教示をお願いします。
【質問者】
大須賀 穣 東京大学医学部産科婦人科学教授

【A】

PMSとは,月経前3~10日の黄体期の間に続く精神あるいは身体症状で,月経発来とともに減退ないし消失するものを言います。イライラ,のぼせ,下腹部膨満感,下腹痛,腰痛,頭重感,怒りっぽくなる,頭痛,乳房痛,落ち着かない,憂うつの順に多いとされ,月経困難症に比べ,精神症状と乳房症状が多いようです。また,浮腫あるいは体重増加を主徴とする場合もあり,症状は多彩です。PMSのうち特に精神症状が重く,日常生活や社会生活に支障をきたすものを月経前不快気分障害(premenstrual dyspholic disorder:PM
DD)と呼んでいます。
本疾患の病因がはっきりと解明されていないため,治療の対象となる基準はなく,また根本的,普遍的な治療法はありませんが,治療として非薬物療法と薬物療法が行われています。非薬物療法は症状日誌によって症状の成り立ちを確認し理解すること,食事,運動,ストレスマネージメントなどにより生活習慣を改善することが治療の第一段階となります。その有効性について明らかなエビデンスはありませんが,PMSだけでなく心身症の治療にも通じる基本的なものと考えます。
薬物療法としては経口避妊薬(oral contraceptives:OC)などの低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬,SSRI,漢方薬などがあります。OCは身体症状の改善に有効であるとして経験的に用いられています。一方,抗アルドステロン作用を有するドロスピレノンとエチニルエストラジオールからなる配合錠(ヤーズR配合錠)は身体症状,精神症状双方に有効性が認められ,中等症以上のPMSやPMDDに対し推奨されています。SSRIも精神症状と身体症状どちらにも有効で即効性があり,症状が出現している黄体期のみの服薬で効果があります。一般的にはSSRIがPMDDに対する標準治療とされています。
すなわち,中等症以上のPMSやPMDDにはドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合錠とSSRIどちらも選択でき,その選択に関してはそれぞれの薬剤特性に鑑みて,患者の希望に沿って使いわけるとよいでしょう。
ドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合錠も含めてOCには月経困難症の改善というメリットがありますが,重篤なリスクとして静脈血栓塞栓症があります。35歳以上で15本以上/日の喫煙者や前兆を伴う片頭痛がある患者には禁忌で,その他慎重投与や禁忌に該当する事項がいくつかあるので要注意です。もちろん,妊娠を希望する患者には使用できませんし,服薬忘れがあると不正出血の原因となります。SSRIもピモジド,チザニジン塩酸塩,ラメルテオン,モノアミン酸化酵素阻害薬などを投与中の患者には禁忌となるので,既往歴,服薬歴の詳細な聴取が必要です。
また,精神疾患患者で月経前に精神症状が増悪し,月経後も完全には症状が消失しない病態(pre-menstrual exacerbation:PME)では既に向精神薬が投薬されているので,OCや漢方薬を併用します。なお,以上のすべての投薬については,保険適用がありませんので,病名記載が必要となります。

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