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閉経期ホルモン療法の薬剤選択の ポイント【ベネフィットとリスク情報を提示し,患者に選択してもらうのが基本】

No.4792 (2016年02月27日発行) P.57

寺内公一 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 女性健康医学講座准教授)

登録日: 2016-02-27

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

閉経期女性のホルモン療法を行うときには,患者の症状や体質そして家族歴や合併症の有無などを確認し,症状の緩和や健康維持への効果とともに,有害事象の出にくい処方を勧めています。しかし患者には,皮膚の過敏性や使用方法の簡便性など,個々の希望があります。そのため,相談の上で服薬アドヒアランスを良好にする処方を決めていますが,患者が希望する処方が,医師が選んだものと異なる場合もあります。
そこで,日常診療で閉経期女性へのホルモン療法を行う際の,処方内容決定までの思考過程や薬剤選択のポイントについて,東京医科歯科大学・寺内公一先生のご教示をお願いします。
【質問者】
森村美奈:大阪市立大学大学院医学研究科 総合医学教育学准教授

【A】

閉経期ホルモン療法(menopausal hormone therapy:MHT)に限りませんが,ベネフィットとリスクについての情報を提示した上で患者に選択して頂くインフォームド・チョイスを基本と考えつつ,あまりリスクを強調しすぎないような説明を心がけています。MHTに関して提示する選択肢を,以下に示します。
(1)子宮のない女性にはエストロゲン(E)単独療法を,子宮のある女性にはプロゲストーゲン(P)併用療法を:この点に関しては,もちろん異論のないところです。
(2)閉経からの年数によって周期的投与法か,持続的投与法か:周閉経期もしくは閉経後前期の人には周期的投与法を,閉経後後期の人には持続的投与法を,というのが一般的ですが,「どこを分岐点とするか」についてのエビデンスはほとんどありません。
1981年に持続的投与法を最初に提示したStalandらは,閉経後1年を過ぎた女性では破綻出血が少ないことを報告しており,これが1つの候補と言えるかもしれません。持続的投与法は周期的投与法よりも心筋梗塞や乳癌のリスクが高いとする報告もありますが確定的とは言えず,この点については必ずしも患者に説明していません。
(3)経口投与か,経皮投与か:この点については,現在のわが国ではE経口+P経口,E経皮+P経口,E経皮+P経皮の3つの選択肢があります。
E経口とE経皮とを比較した様々な論文がありますが,両者の差としてほぼ確実と言えるのが,「静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)のリスクがE経口投与では約2~3倍に上昇するが,E経皮投与では上昇しない」という点です。経口投与されたEの肝臓初回通過効果によりプロテインSとtissue factor pathway inhibitor(TFPI)が減少して活性化プロテインC抵抗性が増加することが,VTEを増加させる機構と考えられています。絶対リスクは低いのでこの点をあまり強調しすぎるのはよくないと思いますが,VTEのリスク因子を持つ女性(「HRTガイドライン」ではそもそも慎重投与ですが)にMHTを行う際には,情報提供をした上でE経皮投与を選択するようにしています。
確定的ではありませんが,骨折・糖尿病に関してはE経口投与を支持する報告が,認知症,うつ病,皮膚老化,片頭痛,乳癌,脳血管疾患についてはE経皮投与を支持する報告があり,患者には必ずしも開示せずに参考にする場合があります。E経皮投与を選択された場合には貼付剤(パッチ)・塗布剤(ジェル)の製剤としての特性〔2日に1枚もしくは週に2回の貼付,あるいは1日に1回の塗布(プッシュ式ボトル型と単包型との違いを含めて)〕について説明し,希望の剤形を選択して頂きます。

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