株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ASC-USを示す若年層に対する定期的な精密検査の必要性

No.4751 (2015年05月16日発行) P.61

鈴木光明 (自治医科大学産科婦人科学講座教授)

登録日: 2015-05-16

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

子宮頸管および腟部の細胞診でASC-US(atypical squamous cells of undetermined significance)の結果を示した場合,HPV陽性の場合は精密検査(生検)となっています。20歳代など未産婦の場合は頸管が未開大で矮小なことが多く,組織の採取が非常に困難で,被検者の恐怖心への配慮も必要ですが,精密検査は行わなければならないのでしょうか。あるいは定期的な細胞診検査でよいでしょうか。 (福井県 K)

【A】

ASC-USの取り扱い(トリアージ)としてはHPV検査が最も推奨され,HPV検査で陽性の場合は精密検査,陰性の場合は1年後の細胞診再検査となります。
質問は,HPV陽性の場合に精密検査(コルポスコピー±生検)ではなく,定期的な細胞診検査で代用できないかどうかについてですが,ガイドラインとしては精密検査を推奨せざるをえないと考えます。
筆者らの成績も含め,HPV陽性でASC-USを示す患者から,20~28%と高率に高度扁平上皮内病変(CIN 2以上)が発見されているからです(文献1,2)。ASCCP(米国コルポスコピー・子宮頸部病理学会)のガイドライン(文献3)やわが国のガイドライン(文献4),また日本産婦人科医会(文献5)も精密検査を推奨しています。
精密検査としてまず行うのはコルポスコピーです。この検査で異常所見(abnormal colposcopic findings:ACF)がみられない場合や,仮にみられても軽度病変(Grade1)の場合には,必ずしも生検を行う必要はないと考えます。ご指摘のように,若年未産婦女性では組織採取が困難なこともありますが,少なくともコルポスコピーは低侵襲であり,必ず行うべきと考えます。
なお,細胞診検査における細胞採取にあたっては,近年腺癌の増加が顕著なこともあり,扁平上皮─円柱上皮境界(squamo-columnar junction:SCJ)および頸管内からブラシやヘラなど適切な採取器具により十分に採取することが肝要です。

【文献】


1) Solomon D, et al:J Natl Cancer Inst. 2001;93(4):293-9.
2) 鈴木光明, 他:第23回日本婦人科がん検診学会抄録集. 2014, p26.
3) Wright TC Jr, et al:Am J Obstet Gynecol. 2007;197(4):346-55.
4) 日本産科婦人科学会, 他, 編:産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2014. 2014, p42-4.
5) 日本産婦人科医会:ベセスダシステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式の理解のために. 2008, p10.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top