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高齢者にも子宮頸癌検診は必須?【米国では子宮頸癌やCIN2以上の病変がみられなかった65歳以上には推奨しないとの考えも】

No.4794 (2016年03月12日発行) P.58

濱島ちさと (国立がん研究センター社会と健康研究 センター検診研究部検診評価研究室室長)

登録日: 2016-03-12

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

子宮頸癌に関して,70歳以上でも毎年がん検診を行うことが望ましいのでしょうか。初回がん検診などでの細胞診施行時にHPV感染の有無,遺伝子型を検査し,それに基づいてリスクの層別化を行い,以降の検診間隔の設定をすることは可能なのでしょうか。 (神奈川県 O)

【A】

(1)70歳以上の子宮頸癌検診の必要性
がん検診の上限年齢を定める方法は,子宮頸癌検診に限らず確立していません。70歳以上を対象としたがん検診の評価研究がほとんどないためです。子宮頸癌検診を導入している欧米諸国では,検診の上限をおおむね60~70歳に定めています。しかし,日本や韓国では検診の上限年齢を定めていません。U. S. Preventive Services Task Forceでは,既に子宮頸癌検診を受けた経験のある65歳以上の女性には検診を受ける利益はないという判断から推奨していません(文献1)。また,米国がん協会でも,65歳以上の女性には,過去の子宮頸癌検診が陰性(連続して3回陰性,直近10年以内2回の検査が陰性であること)である場合や,これまでCIN2以上の病変が認められたことがない場合には検診受診を推奨していません(文献2)。U. S. Preventive Services Task Forceや米国がん協会のがん検診ガイドラインでは,余命10年までを検診の対象としています(文献3)(文献4)。その理由は,70歳以上では併存疾患を有する可能性も高く,検診を受けたとしても必ずしも検診の恩恵を受けるとは限らないことや,過剰診断の割合が高いことにあります。このため,高齢者では,がん検診の利益が不利益を上回るとは言えないという判断から,余命10年未満の場合にはがん検診を推奨していません。わが国でも,今後は検診の上限を定める方法を開発していく必要があります。
(2)検診間隔の設定は可能か
最近,HPV検査により,HPV感染の有無を確認し,陰性の場合には検診間隔を延長できるとする報告が出ています。米国の保険加入者30万人を対象とした研究では,5年間の追跡でHPV検査陰性のCIN3以上の病変発見率は0.17%でしたが,細胞診陰性では0.36%でした。この結果から,2~3年間隔の細胞診単独法に比べ,HPV検査単独法あるいは細胞診との併用により,検診間隔を3~5年に延長できるとしています(文献5)。一方,スウェーデンで行われた無作為化比較対照試験では,初回検診でHPV検査陰性の場合,5年間の追跡によるCIN3以上の病変の感度は89.34%でした(文献6)。この感度は,初回検診で細胞診陰性の場合,3年間の追跡によるCIN3以上の病変の感度92.02%とほぼ同等でした。以上から,従来の細胞診単独法に比べ,HPV検査単独法あるいは細胞診との併用により,検診間隔の5年以上への延長が可能であることが示されました。既に,HPV検査単独法を導入しているオランダでは,30歳代は5年間隔,40~60歳では10年間隔で子宮頸癌検診を実施しています。また,オーストラリアでも,子宮頸癌検診の方法を,2017年より3年ごとの細胞診から5年ごとのHPV検査単独法に変更する予定となっています。

【文献】


1) Moyer VA, et al:Ann Intern Med. 2012;156(12):880-91.
2) Saslow D, et al:CA Cancer J Clin. 2012;62(3):147-72.
3) Lin K, et al:Ann Intern Med. 2008;149(3):192-9.
4) Oeffinger KC, et al:JAMA. 2015;314(15):1599-614.
5) Katki HA, et al:Lancet Oncol. 2011;12(7):663-72.
6) Elfstrom KM, et al:BMJ. 2014;348:g130.

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