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炎症性腸疾患治療中に発生するメサラジン不耐症への対応

No.4733 (2015年01月10日発行) P.52

清水誠治 (JR大阪鉄道病院消化器内科部長)

登録日: 2015-01-10

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

炎症性腸疾患の治療にあたって,メサラジン(5-aminosalicylic acid:5-ASA)は普遍的に使用されている薬品です。その有効性の反面,様々な副作用が発生することも看過できません。心筋炎や間質性肺炎のような重篤な場合から,頭痛のような軽微な副作用までありますが,その正確な発生機序や頻度は明確になっていません。
私が治療した874例中,頭痛は3例(0.34%)にすぎませんが,患者さんには耐えがたい副作用です。克服するために粘り強く脱感作療法も試みましたが,一定量を超えると頭痛が発生するため,結局,炎症が増悪した場合はステロイドを使用せざるをえない状況です。最近,メサラジン不耐症が注目され,投与にあたっての慎重さを啓発する報告も増えています。臨床現場でのメサラジンの安全な使用のコツ,副作用防止対策について,JR大阪鉄道病院・清水誠治先生のご意見を。
【質問者】
多田正大:多田消化器クリニック院長

【A】

ご質問のメサラジン不耐症の本態は十分に解明されているとは言えません。不耐症は副作用に含まれますが,間質性肺炎,腎障害,膵炎,肝障害など明らかな臓器障害をきたす場合は,不耐症とは呼びません。狭義には薬物代謝能が低いために出現する諸症状を意味しますが,広義にはアレルギーも含まれます。広義の不耐症の頻度は約2%で,アレルギーがこのうちの約7割,残りが狭義の不耐症と言われています。不耐症の症状は発熱,下痢,腹痛,頭痛,関節痛などで,投与開始から通常1週間程度で出現しますが,稀に遅延して発現することもあります。
不耐症を含む副作用を遅滞なく診断するためには,複数薬剤を同時に開始することを避けるのが基本です。また,最近ではメサラジンを最大量から開始することが多いようですが,最大量の半量程度から開始するほうが安全と思われます。不耐症の発現時期と症状を十分に認識し,患者さんにも伝えておくことが大切です。
投与開始後,一時的に症状の改善がみられた後,1~2週間目に下痢,腹痛,血便などが増悪した場合は不耐症の可能性が高いと考えられます。この時点で原疾患の増悪と判断すると,より強力な治療法が付加されるので要注意です。臓器障害の有無をチェックするためには,薬剤の投与前後に定期的な血液検査を心がけます。
臓器障害では速やかに薬剤を中止しますが,不耐症では対応がわかれます。メサラジン単独での治療が難しいと予測される場合には,より強力な薬剤や治療法が選択されるので,メサラジン投与にこだわる必要はありません。一方,比較的軽症型でメサラジン単独で治療可能と考えられる場合は,脱感作を含めた対処を考慮する必要があります。単純にメサラジンや代謝産物の血中濃度上昇による場合は,減量ないし血中移行の少ない剤形の選択で解決できる場合もあります。
脱感作療法で様々なアプローチが試みられていますが,少量から漸増しつつ,副作用が出現したら症状消失まで増量中止が原則です。必ずしも成功するとは限りませんが,試みるべき方法です。
結局,メサラジンの投与ができない場合には,一時的にステロイドを使用するとしても,維持療法として免疫調節薬(アザチオプリン)を選択することが妥当と考えますが,抗TNF-α(tumor necrosis factor-α)抗体の投与や手術に至った症例の報告もみられます。参考までに不耐症の多数例を検討した論文を2編引用しておきます(文献1,2)。

【文献】


1) 本谷 聡, 他:IBD Res. 2010;4(2):127-31.
2) 福島恒男, 他:日本大腸肛門病会誌. 2014;67(4): 259-62.

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