肥満は様々な疾患を合併しやすいため,単に過体重として看過すべき病態ではない。特に,内臓脂肪蓄積を伴う場合は,高率に耐糖能異常・高血圧・脂質異常症を合併する。さらに,物理的な障害として変形性関節症や閉塞型睡眠時無呼吸症候群を合併しやすい。
肥満症は主に内科的治療が行われてきた。すなわち,カロリー制限による食事療法,カロリー消費増大目的の運動療法に加えて,肥満解消にとって不適切な,無意識に行っている行動を自覚し修正していくという認知行動療法である。マジンドールが認可された唯一の薬物である。しかし,これらの治療で一時的に肥満が改善しても,長期的には効果が消失(対照と同程度までリバウンド)してしまうことが多い。そこで,肥満症に対する外科治療に期待が寄せられている。主にBMI 35以上の病的肥満症が対象となる。体重減少効果が得られる以前から,代謝性合併症(血糖・脂質)の改善が認められる。GLP-1やグレリンといった消化管ホルモンが術後に変化するためと考えられている(文献1)。
肥満症の外科手術には大きくわけて胃への流入を少なくする手術(胃バンディング術,袖状胃切除術)と,胃をバイパスする手術(Roux-en-Y胃バイパス術)がある。胃バイパス術の減量効果がより高いが,胃内視鏡検査が困難となることから,胃癌罹患率の高い日本人では前者が勧められている。わが国においては腹腔鏡下袖状胃切除術(laparoscopic sleeve gastrectomy)が,2010年から9つの施設で先進医療として認可されており,手術費以外は保険負担が可能となっている。
1) Thaler JP, et al:Endocrinology. 2009;150(6): 2518-25.