胃悪性リンパ腫の治療が変わってきた。胃悪性リンパ腫の大半は胃MALTリンパ腫と胃びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)である。従来は外科切除が第一選択であったが,今日では,いずれの組織型であっても胃を温存する治療を選択する方向にある。胃MALTリンパ腫の70~80%はピロリ菌除菌により寛解する。本治療法が報告された当初,長期予後が不明であるとの指摘もあったが,わが国の420例の長期予後成績(文献1)では95%が10年以上生存しており,長期予後も良好である。除菌治療のみでは制御できない場合も低線量である30Gy局所放射線治療で制御でき,いずれにしても胃を温存できる。胃に限局したDLBCLも従来は外科切除が行われたが,リツキシマブ(R)+CHOP治療で5年全生存期間が95%と良好な成績であり,ほかの複数の臨床試験でもCHOPに比較して,R+CHOPの優位性が示されている(文献2)。
追加放射線治療の効果は,わが国の58例の後方視的解析ではR+CHOP治療での3年全生存期間が91%,放射線治療を追加した35例の3年全生存期間では95%と両群ともに良好であるが,放射線追加の有用性は確認できなかった。現時点ではR+CHOP治療後の追加放射線の意義は未確定ではあるものの,R+CHOPあるいはCHOP+放射線治療のいずれの非外科的治療でも外科切除成績と同等か,それ以上の効果があるとする報告が蓄積され,治療後のQOLを考慮すると,DLBCLであっても非外科的治療が勧められる。したがって,胃悪性リンパ腫は,いずれの組織型であっても胃を温存する治療が第一選択となりつつある。
1) Nakamura S, et al:Gut. 2012;61(4):507-13.
2) Feigier P, et al:J Clin Oncol. 2005;23(18):4117-26.