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子宮内膜症の治療とLEP製剤による血栓症リスク

No.4771 (2015年10月03日発行) P.54

江頭活子 (九州大学産科婦人科)

加藤聖子 (九州大学産科婦人科教授)

登録日: 2015-10-03

最終更新日: 2016-10-26

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生殖年齢女性の10%に子宮内膜症があると言われ,月経困難症や不妊の原因となっている。治療薬としてGnRHアゴニスト,ダナゾールが使用されていたが,これらの薬剤は副作用のため半年程度しか使用できなかった。しかし,子宮内膜症は月経のある期間は増悪,再発する慢性疾患と考えるべきである。近年,低用量エストロゲン─プロゲスチン(LEP)製剤,プロゲスチン製剤であるジエノゲストが保険適用された。これらは使用期間に制限がないことから,妊娠前から閉経期までのライフステージ全体を見越した治療が可能となった。
卵巣子宮内膜症性嚢胞は卵巣癌と関連があり,手術を考慮する必要がある。しかし,卵巣嚢腫の摘出術は卵巣機能を低下させる。また再発が多く,手術を繰り返すことで卵巣機能は低下し,早発閉経,不妊症のリスクがある。挙児希望,年齢,嚢胞の大きさなどから症例に応じた治療を選択し,薬物療法を用いて反復手術は避けたい。
LEP製剤には血栓症のリスクがある。しかし,深部静脈血栓症の発症が無使用者では,年間1万人当たり2~3人で,使用者では2~3倍になる(文献1)ものの,人数にすれば多くはない。LEP製剤により月経困難症,過多月経,月経前症候群(PMS)といった月経随伴症状が和らぎ,女性のQOL改善に役立つこと,また,将来の子宮内膜症の発症を予防することもあり,積極的な使用も推奨されている。ただし,血栓症の高リスク因子である喫煙,肥満,高血圧,高齢などに注意する必要がある。

【文献】


1) Lidegaard O, et al:BMJ. 2011;343:d6423.

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