Mayer-Rokitansky-Kuster-Hauser症候群や,アンドロゲン不応症の腟低形成や無形成に対する造腟法には,非観血的方法と手術療法とがある。前者は腟が形成されるまでに時間がかかり,後者は短時間で腟形成ができるが,術後腟の狭小化や瘢痕形成などが問題になる。また,gender identity disorderのsex reassignment surgeryや総排泄腔術など,小児外科領域でも造腟術が行われているが,術後瘢痕で性交渉困難な症例が存在する。
これまで筆者ら(文献1)が開発した遊離腹膜や人工真皮を用いたMcIndoe変法を行ってきたが,腟ダイレーターを用いた非観血的造腟術(Frank法)は,外来通院のみで造腟できるため,患者の希望,満足度が高く,近年見直されている。
以上のような背景から,最近は当科で開発した3種類(S,M,Lサイズ)の腟ダイレーター(アトムメディカル)を用いて造腟法を外来指導している。先細先端で開始し,7~8cmに達するまで自己拡張させ,8cmに到達すればサイズアップし同様に行う。キシロカインゼリーを塗布後,1日2回,15分間行う。夜間は湯船の中での使用を推奨している。通常,2~4週間,遅くとも8週間でダイレーターのサイズアップが可能で,先天性腟欠損では,2~3カ月でMサイズ(直径2.5cm)まで造腟でき,性交渉も可能になる。総排泄腔術後では,周囲の瘢痕のためLサイズ(直径3cm)まで拡張しないと性交渉に持っていけないが,確実に拡張でき,効果的にも経済的にも有用である。
1) 竹田 省:産婦人科手術No.25. 日本産婦人科手術学会, 編. メジカルビュー社, 2014, p119-28.