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集中治療室患者の蛋白質投与 【エビデンスが乏しく,施設ごとの基準で実施されているのが実情】

No.4815 (2016年08月06日発行) P.50

田村貴彦 (高知大学麻酔科学・集中治療 医学)

横山正尚 (高知大学麻酔科学・集中治療 医学 教授)

登録日: 2016-08-06

最終更新日: 2016-10-30

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手術医療の進歩により, 周術期の目標は死亡率を下げることから,いかに回復の早さおよび質を高めるか,に移りつつある。
特に,2000年代頃から欧州より提唱されたERAS(enhanced recovery after surgery)の概念がわが国においても浸透しはじめ,周術期管理は大きく変わろうとしている。その中で, 急性期栄養療法も見直されており,「周術期の栄養管理は絶食と補液」という,一辺倒な考えはなくなりつつある。集中治療室管理においても,海外を中心に各種ガイドラインに準じた急性期栄養療法が実践されてきている。
一方, 重症患者に対する蛋白質の投与量に関しては根拠となる論文が少なく,ガイドラインでは依然として古くから使用されている1.2~2.0g/kg/日の投与量が推奨されている。重症患者における,蛋白質投与と死亡率に関する最近発表された無作為化比較試験のsystematic review (文献1)では,エビデンスに耐えうる良質な無作為化比較試験は1つだけであり,メタ解析を行うことはできなかったと結論づけている。つまり, 急性期栄養管理は患者の予後に関わる重要な要素と考えられるが,現時点では施設ごとの基準で実施されているのが実情である。
今後,より質の高い基礎および臨床研究,そして日本人の体型に見合ったわが国独自のガイドラインの作成が必要であると考えられる。

【文献】


1) Tamura T, et al:Anaesth Intensive Care. 2014;42(6):806-7.

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