株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

卵巣癌における癌幹細胞の役割 【従来の抗癌剤治療では根絶できず,再発を引き起こす原因となる】

No.4816 (2016年08月13日発行) P.50

本原剛志 (熊本大学産科婦人科)

片渕秀隆 (熊本大学産科婦人科教授)

登録日: 2016-08-13

最終更新日: 2016-10-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

卵巣癌診療において,しばしば経験する治療抵抗性あるいは,寛解後の再発など,現行の標準的治療,特に既存の抗癌剤治療に対して婦人科腫瘍医が限界を感じることも少なくない。
近年,そのような悪性腫瘍の治療抵抗性や再発・転移において,一群の細胞集団である「癌幹細胞」の関与が指摘されており,これは卵巣癌においても同様である(文献1)。すなわち,腫瘍組織の階層性の頂点に位置する癌幹細胞は,特殊な微小環境であるニッチに存在することで,自己の細胞周期を静止期に保ち,休眠状態のまま維持されている。したがって,従来の抗癌剤治療は分裂・増殖が活発な分化したがん細胞を標的にしているにすぎず,癌幹細胞の根絶には至っていないことが窺われる。結果として,一時的な腫瘍の縮小効果が得られた場合においても,癌幹細胞が残存する限り,再発が引き起こされることになる(文献1)。
最近の報告では,卵巣癌幹細胞が卵巣癌に特徴的な進展形式である腹膜播種病巣の形成に加え,実質臓器への遠隔転移に深く関わっていることが明らかにされている(文献2)。卵巣癌幹細胞は,それぞれの進展部位において既存の抗癌剤治療に対する抵抗性を示すため,今後は癌幹細胞を標的とした新規治療戦略の開発が望まれる。

【文献】


1) Visvader JE, et al:Nat Rev Cancer. 2008;8(10):755-68.
2) Tjhay F, et al:Cancer Sci. 2015;106(10):1421-8.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top