【質問者】
木下芳一 島根大学医学部第二内科教授
日本消化器病学会により作成された「機能性消化管疾患診療ガイドライン2014─機能性ディスペプシア(FD)」の中では酸分泌抑制薬(H2RAとPPI)と運動機能改善薬がまず初めに使用されるべき薬剤(初期治療薬)とされており,それらの薬剤で症状改善が十分でない場合には二次治療で抗不安薬,抗うつ薬,漢方薬の使用が提案されています。
一般的に機能性ディスペプシア患者への薬物治療の効果は非常に低いことが知られています。プラセボ効果が40~50%程度と非常に高く,機能性ディスペプシア治療薬はプラセボに数%程度の上乗せ効果しか示せないことがほとんどです。有意差を示すこと自体が困難であり,症状改善を主要評価項目とした場合,現在用いられている酸分泌抑制薬や運動機能改善薬でもプラセボに有意差を示せない薬剤が少なくないことはこのことを雄弁に物語っています。すなわち,効果が大きいから初期治療薬とされたのではありません。
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