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機能性ディスペプシアの二次治療における薬剤の使いわけ 【十分な臨床経験と丁寧な問診による正しい診断が必須。薬効は未知数の部分も多い】

No.4833 (2016年12月10日発行) P.54

木下芳一 (島根大学医学部第二内科教授)

三輪洋人 (兵庫医科大学内科学消化管科講座主任教授)

登録日: 2016-12-07

最終更新日: 2016-12-01

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  • 機能性ディスペプシアの治療では初期治療として酸分泌抑制薬か運動機能改善薬の使用が推奨され,これらの薬剤が効果不十分であった場合には二次治療として抗不安薬,抗うつ薬,漢方薬を使用した治療が提案されています。エビデンスはそれほど多くないものの,初期治療を行う場合で心窩部痛や心窩部灼熱感が主な症状のときには酸分泌抑制薬が,胃もたれ症状や早期飽満感が強いときには運動機能改善薬が先行使用されることが多いように思います。二次治療で使用が提案されている抗不安薬,抗うつ薬,漢方薬に関してそれらの使いわけに参考となる患者特性がありましたらご教示をお願いします。
    兵庫医科大学・三輪洋人教授にご回答頂けますと幸いです。

    【質問者】

    木下芳一 島根大学医学部第二内科教授


    【回答】

    日本消化器病学会により作成された「機能性消化管疾患診療ガイドライン2014─機能性ディスペプシア(FD)」の中では酸分泌抑制薬(H2RAとPPI)と運動機能改善薬がまず初めに使用されるべき薬剤(初期治療薬)とされており,それらの薬剤で症状改善が十分でない場合には二次治療で抗不安薬,抗うつ薬,漢方薬の使用が提案されています。

    一般的に機能性ディスペプシア患者への薬物治療の効果は非常に低いことが知られています。プラセボ効果が40~50%程度と非常に高く,機能性ディスペプシア治療薬はプラセボに数%程度の上乗せ効果しか示せないことがほとんどです。有意差を示すこと自体が困難であり,症状改善を主要評価項目とした場合,現在用いられている酸分泌抑制薬や運動機能改善薬でもプラセボに有意差を示せない薬剤が少なくないことはこのことを雄弁に物語っています。すなわち,効果が大きいから初期治療薬とされたのではありません。

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