外来における減量成功率は高くなく,リバウンド率は高い
院外生活に対する効果的な指導にはチーム医療が不可欠である
ダイエットノート(食事・体重記録帳)は院外の生活指導に効果的なツールである
肥満症患者における心理的ストレスは,減量治療に大きく影響する
肥満症患者における院外対策として,集団肥満教室,メタボ対策ランチ,メタボ通信などのツールが効果的である
21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21」の中間報告では,日常生活の歩数や肥満者の割合などの目標値に対する達成状況が非常に悪く,肥満者の「生活習慣の是正」や「減量」の難しさがうかがえる1)。また,わが国における肥満症の減量成功率や体重再増加率(リバウンド率)に関する報告は少ない。
2006年より京都医療センター臨床研究センターでは,国立病院機構肥満症多施設共同研究(NHO Japan Obesity&Metabolic Syndrome Study:NHO JOMS)にて,国立病院機構関連病院の糖尿病外来通院中の肥満症(BMI≧25)患者を対象に,日本人における肥満症の減量成功率・リバウンド率とCVD(cardiovascular disease)リスクへの影響を検討した。「肥満症治療ガイドライン2006」2)に基づく食事・運動指導の結果,約42%の肥満症患者が減量に成功した。このうち,1年後のリバウンド率は約34%であった。また,減量成功群においてのみ,酸化LDLや動脈硬化指標の改善を認めた3)~5)。
本研究で,わが国の一般的な糖尿病外来における減量指導の成果・現状と減量治療の有用性が示された。
近年,肥満・メタボ型糖尿病が増加してきたため4),当センターでは,2001年に「肥満・メタボリックシンドローム外来(通称:肥満・メタボ外来)」を開設し,13年以上にわたり肥満を専門とした生活習慣病の診療を行っている。
前述したJOMSの成績に示されるように,肥満者の生活習慣改善は非常に難しい。日常診療の減量指導において,患者のやる気や効果面で苦慮することが多い。1人の医師の指示だけでは,患者の減量方法に選択の余地がなく,指導者への抵抗が生じることもある。また,医師には言いにくいが,ほかの医療スタッフには言いやすい患者もいる。
そこで当外来では,まず,専門の看護師が,①体重測定,②外来通院まで(院外2カ月間)の生活状況や患者の気持ちの聴取,③療養指導,を行う。その情報をもとに,医師の診察と治療,栄養士の個別指導を行う。このチーム医療では,いろいろな見地に立つスタッフからアドバイスが提供され,患者本人がより自分に合った減量法を自主的に選ぶことが可能となる。
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