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(1)食道ステント[特集:がんによる消化管狭窄へのステント留置 ─治療の可能性を広げる]

No.4842 (2017年02月11日発行) P.26

三浦昭順 (がん・感染症センター都立駒込病院食道外科医長)

千葉哲磨 (がん・感染症センター都立駒込病院食道外科)

門馬久美子 (がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科内視鏡科部長)

登録日: 2017-02-10

最終更新日: 2017-02-09

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  • 食道ステント留置に明確な適応基準はなく,各患者の状況に応じて,各施設間で適応を決められているのが現状である

    「食道癌診断・治療ガイドライン 2012年4月版」によれば,(化学)放射線療法前の食道ステント留置は,避けるべきとされている

    わが国における食道癌の悪性狭窄に対するステントは,金属ステントのみである。その中でもUltraflexTM Esophageal Stentには,ステントの口側から展開するproximalタイプがあり,食道ステントの留置をしやすい利点がある

    Niti-STM食道用ステントは,Z状に編み込まれたステントで軟らかいのが特徴であり,(化学)放射線療法後の食道狭窄に対しても使用可能である

    ステント留置は処置に伴う侵襲度は比較的小さいが,偶発症が発症すると致命的になることもあるため,適応を検討し,手技,処置具などに精通した医師が,十分なインフォームドコンセントを得た上で行う処置である

    1. 食道癌による狭窄に対するステント留置術

    他臓器に発症したがんと同様に,食道癌も進行度により治療戦略が異なる。病変局所の進行により,周囲臓器へ浸潤したり,遠隔臓器転移等を認め,化学療法や化学放射線療法が治療の第一選択とされる病態を,切除不能食道癌としている1)。切除不能食道癌では,診断時に既に周囲臓器へ瘻孔を形成していたり,狭窄が強く,誤嚥性肺炎を併発したり,がんの進行により悪液質が悪化し,全身状態が不良であることも少なくない。このような状態では,化学療法や化学放射線療法が選択できないこともあり,QOLの改善だけを目的に治療することもある。
    食道ステント留置術は,処置に伴う侵襲度が比較的低いため,このような切除不能食道癌に対して,瘻孔閉鎖ならびに経口摂取などのQOL改善を目的として選択されるケースも多い。しかし,処置に伴う偶発症が発症すると,致命的になることもあり,その適応や手技,処置具などを理解し,インフォームドコンセントを十分に得ることが重要である2)3)。      
    食道ステント留置術は,主に,がんによる悪性狭窄と内視鏡治療後や術後の吻合部狭窄などの良性狭窄に対し,拡張目的に施行されているが,本稿では,食道癌による悪性狭窄に対するステント留置術を対象に,わが国における食道ステントの現状について,当院での治療経験や論文報告を参考に概説する。

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