胃癌や膵・胆道癌によるgastric outlet obstruction(GOO)は,経口摂取が不可能となるのみでなく,様々な消化管閉塞症状により患者QOLが著しく低下する病態である
従来,GOOに対する標準的治療として行われてきた外科的バイパス術(胃空腸バイパス術)に代わり,より低侵襲な内視鏡的ステント留置術が姑息的治療として広く行われるようになってきた
ステント留置術の手技的成功率は90~100%,臨床的成功率は90%程度である。合併症は軽微なものが主であり,出血・穿孔など重篤なものは少ない
胃空腸バイパス術と比べ,手技時間,食事摂取までの期間,入院期間などにおける優位性は確立しているが,長期成績においてはステント閉塞が問題となる。長期生存が予想される患者においては,胃空腸バイパス術が望ましい可能性がある
膵・胆道癌では解剖学的理由から胆道狭窄が先行することが多く,胆管および十二指腸ステント(double stenting)が必要となるが,留置形態など治療戦略は複雑化する
gastric outlet obstruction(GOO)は胃癌による幽門狭窄や,膵・胆道癌などのいわゆるperiampullary cancer,リンパ節転移,他臓器癌浸潤による十二指腸狭窄が原因となる胃排泄障害を指す。GOOにより経口摂取は不可能となり,低栄養・電解質異常を引き起こすのみならず,胃液貯留による悪心・嘔吐や腹痛,腹部膨満などの消化管閉塞症状により患者QOLを著しく低下させ,経鼻胃管留置や胃瘻造設などによる持続的な減圧を余儀なくされる1)。
GOOを呈する症例は,局所進行や遠隔転移により,既に根治的切除不能であることが多い。Ohら2)は,ステント留置を要したGOO患者の50%生存期間は2~3カ月程度(膵癌2.7カ月,非膵癌2.4カ月)であると報告している。GOOを呈する患者の予後は,癌種を問わず限定的であると言わざるをえない。
従来,GOOに対する標準的治療として外科的バイパス術(胃空腸バイパス術)が施行されてきたが,全身麻酔や手術侵襲など患者の負担は計り知れず,低侵襲かつ即効性のある治療が求められ,近年,GOOに対するpalliative therapyとして内視鏡的ステント留置術が広く行われるようになってきた。
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