大学医学部カリキュラムのうち、学修時間数の3分の2程度の目安となる「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(コアカリ)が6年ぶりに改訂された(図)。改訂に当たって、文部科学省調査研究チームのリーダーを務めた北村聖氏(国際医療福祉大医学部長)に、改訂のポイントについて伺った。
従来は医学教育の到達目標を「一般目標と行動目標」という言葉で表していましたが、今回の改訂で「ねらいと学修目標」という言葉に変更しました。言葉遊びをしているのではなく、設計思想が大きく変わったからです。
今までの医学教育は、内科の単位、外科の単位という風に、教育を小さなユニットに区切り、それを集めれば良い医師ができ上がるという設計思想でした。でも、それはジグソーパズルでいえばバラバラのピースを寄せ集めているにすぎなくて、医師という“1枚の絵”を描けるものではありませんでした。
今回の改訂に当たっては、outcome-based education(アウトカム基盤型教育)を強く意識しました。修得すべき知識を並べたリストではなく、まずアウトカム(到達目標)となる能力の全体像を明確化した上で、それを達成するにはどんな項目が必要かという組み立て方です。アウトカムとは、「基本的な資質と能力」にほかなりません。
21世紀に入り、患者を臓器の集合体ではなく1人の人間として向き合いながら診る能力のある医師を社会が求めるようになりました。そうしたニーズに応えるには、患者さん中心に考える態度、コミュニケーション能力、地域で働ける能力など、診療科ごとのピースの「隙間」にあって見落とされがちだった部分をつなぎ合わせる能力が重要です。今回の改訂版では、そうした能力に焦点を当てています。
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