重粒子線治療は1994年から放射線医学総合研究所(放医研)にて開始された治療であり,婦人科腫瘍に対しては95年から,局所進行子宮癌に対する臨床試験が開始された。
これまで,子宮頸部扁平上皮癌患者に対する臨床試験には89例が登録された。この線量増加試験の結果から,72.0Gy(RBE)以上の線量が局所制御に有効な線量であることが示唆されている。全89例中,72.0Gy(RBE)以上の線量が用いられた39例の5年局所制御率は86%であった。標準的な化学放射線治療によるわが国の多施設共同前方視解析(JGOG1066)では,腫瘍径5~7cm,7cm以上の2年骨盤内制御率がそれぞれ72%,54%と報告されており1),この報告と比較すると,良好な局所制御率と言える。また,局所進行子宮頸部腺癌に対する臨床試験には55例が登録され,全体の5年局所制御率は55%であった2)。標準的な化学放射線治療を中心としたわが国の多施設共同後方視解析では,5年局所制御率は36%と報告されており3),腺癌においても従来の治療法と比べ,重粒子線治療は良好な局所制御率が得られている。
さらなる局所制御の向上と遠隔転移の抑制を目的として,2010年より化学療法併用の重粒子線治療の臨床試験が開始され,現在は先進医療へと移行し,保険収載へ向けて症例を集積中である。
【文献】
1) Toita T, et al:Gynecol Oncol. 2012;126(2):211-6.
2) Wakatsuki M, et al:Cancer. 2014;120(11):1663-9.
3) Niibe Y, et al:Jpn J Clin Oncol. 2010;40(8):795-9.
【解説】
小此木範之 放射線医学総合研究所病院婦人腫瘍科科長