(埼玉県 I)
NSAIDsの製品添付文書には「プロスタグランジン合成阻害作用により,水,ナトリウムの貯留が起こるため,心機能不全が悪化するおそれがある」と記載されており,心不全患者での使用は禁忌とされています。しかし,NSAIDsによる腎血流低下作用については,添付文書には明記されていません。ご指摘を受け,改めてこれまでの報告を整理してみました。
NSAIDsの薬理学的作用は,prostaglandin H synthaseの2つのisoform〔cyclooxygenase(COX)1 and 2〕,すなわちCOX-1およびCOX-2阻害作用により,体内で痛みの原因となるプロスタグランジン(PGs)の産生を抑制することにあります1)。痛みの産生に関わるCOXはisoform 2であるため,原理的にはCOX-2のみを阻害すればよいのですが,従来のNSAIDsはCOX-1,2ともに非選択的に阻害してしまいます。COX-1は体内では胃粘膜の防御機構維持や血小板凝集,腎機能の維持にも関わっており,非選択的COX阻害薬であるNSAIDsは副次的作用として,胃粘膜障害や血小板凝集抑制,腎機能障害を起こします。すなわち,腎臓においては,COX-1阻害は内因性プロスタグランジンI2およびE2による輸入細動脈(ネフロンに入る動脈)拡張作用を阻害し,腎血流量(renal blood flow:RBF)および糸球体濾過率(glomerular filtration rate:GFR)の低下が起こります。
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