▶2012年以来の改訂となる「がん対策推進基本計画」案は、予防を全体目標の1つに掲げる。がんには生活習慣由来と感染症由来がある。禁煙や運動などの生活習慣改善は容易ではないが、感染症由来は感染源の遮断により予防が可能になるため、適切な対策による死亡減少がより期待できる。
▶感染症由来の胃がん対策として、2013年から胃炎に対するピロリ除菌が保険適用された。その影響について5日、ピロリ菌研究で著名な上村直実氏と浅香正博氏が厚生労働省で報告した。上村氏は、除菌を加味していない国立がん研究センターの胃がん死亡予測値と比べると、13〜15年の実測値は予測値を毎年約3000名下回るものの明確な統計学的証拠を見出せなかったとし、「統計学的に明らかになるのは10〜15年かかる」と報告。浅香氏は2日に公表された16年の胃がん死亡数は4万5509人で、前年から9%も減少したと紹介し、保険適用により多くの命を救えたと強調した。
▶除菌の胃がん予防効果を示す期間について参考となる、中国の臨床試験がある(Ma JL,et al:J Na tl Cancer Inst.2012;104(6):488-92)。プラセボを使用し除菌群と非除菌群に無作為に分けて7.3年間観察したところ有意差は見られなかったが、観察期間を14.7年に延ばしたところ、有意差をもって除菌群が39%胃がん発生を抑制したという。
▶気の早い話だが、基本計画の次の改訂は、胃炎に対するピロリ除菌保険適用から10年目の23年。除菌の胃がん予防効果について厚労省研究班は今年度から7年間の前向き調査を行っており、その結果を踏まえて、厚労省はがん検診にピロリ除菌を採用するかどうか検討する予定だ。除菌治療のがん予防効果の推移を小誌も注視したい。