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遺伝性の子宮体癌(EC)の識別戦略とコンサルティング【大腸癌の既往歴や家族歴をもつEC例では遺伝性評価が考慮されるが,遺伝性ECの臨床識別においては未だ慎重な取り組みが必要】

No.4868 (2017年08月12日発行) P.56

横山良仁 (弘前大学医学部産科婦人科学教室主任教授)

佐藤直樹 (秋田大学大学院医学系研究科機能展開医学系 産科婦人科学講座准教授)

登録日: 2017-08-09

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  • 遺伝性の子宮体癌(endometrial cancer:EC)は,特に若年者に多く見受けられます。その識別方法と遺伝性ECと判明した場合のコンサルティングについて,秋田大学・佐藤直樹先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    横山良仁 弘前大学医学部産科婦人科学教室主任教授


    【回答】

    ECの5~10%は遺伝性発生であり,その過半がリンチ症候群(Lynch syndrome:LS)と推定されています。LSは,ミスマッチ修復(mismatch repair:MMR)遺伝子の生殖細胞系列変異を主な素因として,EC,大腸癌,卵巣癌,胃癌,胆道癌,尿路癌などの関連がんが高率に発生する常染色体優性遺伝の腫瘍症候群です。若年発がん・多発がん・家系内がん集積が典型ですが,病原遺伝子変異の部位や様式により発がんリスクは異なり,非典型例も少なくありません。その識別は,後続関連がんの予知と予防に有益で,血縁者にも遺伝学的評価や予防医療の機会を提供します。米国の大腸癌領域では,全例への遺伝性評価と病的MMR遺伝子変異保持者に対する医療管理が推奨されています。

    50歳未満で発症したEC患者は,LSである可能性がやや高く(自験例で7.8%),関連がん(特に大腸癌)の病歴や家族歴を伴う場合には,さらに疑いが強くなります。しかし,社会認知が未熟で識別・管理の指針も未確立な現状での評価は,患者と家族を多発がんの不安や絶望に陥れかねず,わが国での臨床識別はまだ慎重であるべきです。

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