株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

子宮体癌の妊孕性温存療法【挙児希望患者へのMPA投与で67%の病巣消失率を報告。積極的不妊治療による妊娠までの期間の短縮が重要】

No.4879 (2017年10月28日発行) P.53

牛嶋公生 (久留米大学産婦人科主任教授)

登録日: 2017-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

子宮体癌は,わが国でも著しく増加している。2008年以降,浸潤癌においては子宮頸癌を上回る罹患数となった。従来,閉経前後に多いと言われてきたが,全体の5%程度を占める40歳未満の患者数も,絶対数の増加に伴い増加している。

若年子宮体癌の多くは,排卵異常などを伴った妊娠経験のない女性であり,組織型は,エストロゲン依存性の子宮内膜増殖症を伴う高分化型の類内膜癌である。

強く妊娠を希望している女性においては,MRI検査によって病巣が子宮内膜に限局していると判断される高分化型の類内膜癌や子宮内膜異型増殖症に対して,高用量のプロゲステロンであるメドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)(ヒスロンH®)を用いた妊孕性温存治療が試みられてきた。

多施設共同前方視的研究では,MPA 600mg/日を26週間連続投与した症例において67%の病巣消失率が報告され,その後の妊娠・出産例も報告された。治療効果判定は,子宮内膜全面搔爬による病理診断による。

一方,本治療法の問題点は,再発率が高い点である。再発率を低減させるには,ホルモン剤による消退出血を起こす維持療法が勧められる。また,妊孕性温存治療の本来の目的である妊娠・出産のためには,生殖補助医療(ART)による積極的不妊治療を行い,妊娠までの期間を短縮することが勧められる。

安全に患者の要望に沿うためには,早期子宮体癌の妊孕性温存治療は標準治療ではないことを理解し,婦人科腫瘍医,病理医,その後の生殖内分泌医との密な連携が重要である。

【解説】

牛嶋公生 久留米大学産婦人科主任教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top