上皮性卵巣癌の10%以上が遺伝性発がんであり,BRCA遺伝子やミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異が常染色体優性遺伝の素因として認知されています。上皮性卵巣癌における遺伝学的検査やポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬の保険収載を近未来に展望し,遺伝性評価の対象・方法と期待される社会的利益をご教示下さい。新潟大学・関根正幸先生にご回答をお願いします。
【質問者】
佐藤直樹 秋田大学大学院医学系研究科医学専攻 機能展開医学系産婦人科学講座准教授
卵巣癌全体の約10%が遺伝性であり,遺伝性卵巣癌のうちBRCA1,2遺伝子変異(hereditary breast ovarian cancer:HBOC)は65~75%,MMR遺伝子変異(リンチ症候群)は10~15%とされています。その遺伝子検査に関しては,わが国では主にファルコバイオシステムズが受託している状況です。さらに,BARD1,BRIP1,CHEK2,MRE11A,NBN,PALB2,RAD50,RAD51C,TP53などの遺伝子変異も遺伝性卵巣癌に関与していることがわかっており,multi-gene testingも行われはじめてきています。BRCA変異キャリアの生涯乳癌発症リスクが約70%,卵巣癌がBRCA1で約40%,BRCA2で約20%と報告され,日本人女性の生涯卵巣癌発症リスクが約1%ですのでかなりの高率です。乳癌と卵巣癌以外に,前立腺癌と膵癌の危険性が高くなることもわかっています。
残り665文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する