進行卵巣癌に対する標準治療は,最初に手術を行い術後に化学療法を行う手術先行治療(primary debulking surgery:PDS)である。卵巣癌に関しては,残存腫瘍径が予後と関連していることが明らかになっているため,PDSでは,腫瘍の完全切除を目標としている。しかし,実際に進行卵巣癌で完全切除を達成できるのは2割程度で,侵襲性が高く周術期の合併症も多い。近年,本疾患の治療成績改善をめざした治療のひとつに術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy:NAC)がある。
これまで,European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)の行ったEORTC 55971試験1)とUK Medical Research Council Clinical Trials Unit(MRC-CTU)が行ったCHORUS試験2)で,またわが国でもJapan Clinical Oncology Group(JCOG)の行ったJCOG 0602試験3)でNACに関する第3相試験が遂行された。EORTC 55971試験では,NACの治療成績が標準治療と遜色のないことが示され,CHORUS試験でも,NACは標準治療と同等か,やや良好な治療成績であることが報告された。JCOG 0602は既に予定登録症例数300例の集積が終了し,2017年内に最終解析になる。今回の最終解析で他の試験と同様の結果が示されれば,NACは進行卵巣癌の標準治療になりうる。
【文献】
1) Vergote I, et al:N Engl J Med. 2010;363(10): 943-53.
2) Kehoe S, et al:Lancet. 2015;386(9990):249-57.
3) Onda T, et al:Jpn J Clin Oncol. 2010;40(1):36-41.
【解説】
西尾 真*1,牛嶋公生*2 *1久留米大学産婦人科 *2同主任教授