【質問者】
下村 裕 山口大学大学院医学系研究科皮膚科教授
全身性強皮症(以下,強皮症)は皮膚および内臓諸臓器の線維化と血管障害を特徴とする原因不明の全身性自己免疫疾患です。その臨床症状は非常に多彩ですが,本症には疾患特異性が高い自己抗体が出現することが知られており,それぞれの自己抗体を有する患者には共通した臨床的特徴があります。わが国の強皮症患者では抗Scl-70(トポイソメラーゼⅠ)抗体,抗セントロメア抗体がそれぞれ30~40%で陽性となりますが,これらの2つの抗体の次に出現頻度が高い自己抗体が抗RNAポリメラーゼⅢ抗体で,わが国における陽性率は約5%です1)。疾患特異性がきわめて高く,本症以外の疾患で陽性となることはほとんどありません。
本抗体陽性例の臨床的特徴として,①皮膚硬化が広範囲に及び,かつ比較的急速に進行する,②強い皮膚硬化のため,手指の屈曲拘縮をきたしやすい,③間質性肺疾患の合併率が低く,かつ軽度である,④手指潰瘍や指尖部虫喰状瘢痕が少なく,末梢循環障害は比較的軽症である,⑤皮膚硬化は高度であるが,副腎皮質ステロイド内服治療によく反応し,比較的速やかに皮膚硬化が改善する,⑥強皮症腎クリーゼの発症頻度が他抗体陽性例に比べて高い,といった点が挙げられます1)2)。
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