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(1)胃酸分泌抑制薬の長期投与が必要となる疾患[特集:胃酸分泌抑制薬長期投薬の功罪]

No.4894 (2018年02月10日発行) P.24

塩谷昭子 (川崎医科大学消化管内科学教室教授)

松本啓志 (川崎医科大学消化管内科学教室准教授)

登録日: 2018-02-09

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  • 胃酸分泌抑制薬は,主に胃食道逆流症(GERD)の維持療法および非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)起因性消化性潰瘍の予防薬として長期に処方される

    重症びらん性GERDは,症状の有無にかかわらず難治例が多く,出血・狭窄等の合併症をきたしやすいので長期の維持療法を要する

    低用量アスピリン(LDA)による消化管出血の危険性は,COX-2選択性の有無にかかわらずNSAIDsの併用により増加する

    ガイドラインではGERD治療およびNSAIDs潰瘍予防にプロトンポンプ阻害薬(PPI)が最も推奨されている

    1. 胃酸分泌抑制薬

    胃酸分泌抑制薬としてH2受容体拮抗薬(histamine H2 receptor antagonist:H2RA),より強い酸分泌抑制作用をもつプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)に加え,最近,さらに強い速効性のあるカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(potassium-competitive acid blocker:P-CAB)が登場した。他には選択的ムスカリン受容体拮抗薬やガストリンの放出を抑制する抗ガストリン薬などがあるが,抑制作用はH2RAより弱く,処方される頻度は少ない。

    現在,PPIの保険適用として,胃潰瘍,吻合部潰瘍,十二指腸潰瘍,Zollinger-Ellison症候群,胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD),非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制,H. pylori除菌の補助が挙げられる。中でも長期投与が必要な場合は,びらん性GERD(逆流性食道炎)の維持療法と,NSAIDs,特に低用量アスピリン(low dose aspirin:LDA)投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制である。しかし実臨床の場において,非びらん性GERD(non-erosive reflux disease:NERD)の維持療法やLDA内服患者の消化性潰瘍の一次予防として,長期にPPIが処方されていることも多い。P-CABの保険適用疾患は,PPIとほぼ同様であるが,NERDは適用となっていない。

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