わが国においては,子宮頸癌予防のためのヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)ワクチンの積極的勧奨がストップしたままになっています。この状況が続いていくと日本人女性の子宮頸癌リスクはどのようになってしまうのでしょうか。これまでの背景と,わが国における臨床研究の現況,今後の課題などについて,大阪大学・上田 豊先生のご教示をお願いします。
【質問者】
関根正幸 新潟大学医学部産科婦人科学教室准教授
わが国では近年,子宮頸癌の罹患率・死亡率が若年世代を中心に急増していますが,子宮頸がん検診の受診率は依然として低く,HPVワクチンによる子宮頸癌の予防に期待が寄せられました。2010年度から13~16歳を対象としたHPVワクチンの公費助成が開始され,学校接種ではなかったにもかかわらず接種率は約7割と高率でした。2013年4月には定期接種となったにもかかわらず,副反応とされる症状がマスメディアで繰り返し報道され,同年6月に厚生労働省の積極的勧奨の一時中止が発表されました。4年以上経過した現在も,この積極的勧奨の一時中止は継続中であり(本稿執筆時),生まれ年度によってワクチン接種状況が大きく異なることとなっています1)2)。
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