(高知県 F)
ご存知のように,胃癌リスク層別化検査(A BC分類)は血清PGとヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)IgG抗体(Hp IgG抗体)により,胃癌のリスクを層別化する検査です。血清PG値はPGⅠ≦70かつPGⅠ/Ⅱ≦3を陽性(+)のカットオフ値とし,Hp IgG抗体検査の陽性(+),陰性(-)の判定は測定キットのカットオフ値に基づきます。PG値・Hp IgG抗体検査の結果,胃癌リスクをA群〔Hp(-)PG(-)〕,B群〔Hp(+)PG(-)〕,C群〔Hp(+)PG(+)〕,D群〔Hp(-)PG(+)〕[D群はC群と区別せずC群〔PG(+)〕としても可]の4群(3群)に層別化します。
胃癌リスク層別化検査は,ピロリ菌の除菌治療を受けていない人が対象となります。除菌後の人は問診の段階で除外しますが,除菌後にこの検査を受ける人がどうしても入り込むことがあり,検査後に除菌済みであることが判明した場合は,胃癌のリスクがある群としてE群〔eradication(除菌)群〕に分類します。E群の人は,B・C・(D)群の人と同様に,1~2年ごとの内視鏡検査を受けることが推奨されます1)。
問題となるのは,患者が除菌治療を受けたという認識がない場合です。誤ってA群に分類されてしまうと,将来の胃癌のリスクがあるのに,「ない」と誤解してしまうことになりかねません。
なお,除菌した時点で,萎縮性胃炎の進行が軽度であった患者は,腸上皮化生を伴う高度な萎縮性胃炎があった患者に比べて,将来の胃癌発生のリスクは低いものと推定されますが,現時点では,萎縮性胃炎の程度別の内視鏡検査の間隔についてのコンセンサスは得られていません2)。
【文献】
1) 日本胃がん予知・診断・治療研究機構.
[http://www.gastro-health-now.org/]
2) 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会, 編:H.pylori感染の診断と治療のガイドライン 2016改訂版. 先端医学社, 2016.
【回答者】
高㟢元宏 たかさきクリニック胃腸科・内科理事長