(東京都 Y)
正常な尿の色は,血液の色に由来します。淡黄色~黄色はウロクロム,ウロビリン,ウロビリノゲン,インドール誘導体によるもので,主にウロクロムによるものと言われています。これは血中のヘモグロビンが寿命を迎え,肝臓や腎臓で処理され,最終的に生成されるもので,尿中へ排泄されます。このため最終産物であるウロビリノゲンが正常な尿は淡黄色~黄色の色調を呈します。
この色調の濃淡は,尿の濃縮度合に依存します。ウロクロムの産生および排泄は一定で,体の水分状態により変化します。健常人でも,水分を多く摂ると無色に近い色,脱水状態では濃黄色になることがあります。尿の濃縮障害(尿崩症を含む)などでも尿が無色~淡黄色になることがあります。さらに服用薬剤も尿色調に影響を及ぼします。
また,摂取水分が多くなり排尿量が多くなると,尿糖や尿蛋白といった病的成分が希釈され、尿検査の結果が偽陰性(偽低値)になる場合があるため,無色に近い尿は注意が必要です。
腎機能の主な指標となる尿蛋白,クレアチニン,eGFRなどは,尿色調の濃淡とは関連があまりみられません。しかし,腎の尿濃縮障害などの場合は,無色のような色調を呈することがあります。したがって,濃淡で腎機能異常を疑うよりは,スクリーニングとして尿定性検査や尿沈渣等を行いその結果から疑うことが望ましいと考えます。
【回答者】
野澤佳祐 旭川医科大学病院臨床検査・輸血部主任臨床検査技師