1950年代,生体内で遺伝子変異により出現したがん細胞が,宿主免疫により同定され排除されるというがん免疫監視機構(cancer immuno-surveillance)が提唱された1)。その後,免疫治療の開発は免疫の賦活化を主体に進められてきた。腫瘍抗原を主体としたがんワクチンや樹状細胞ワクチン,サイトカイン,T細胞輸注療法,抗体療法など様々な治療法が開発されてきたが,がん治療,特に固形がんにおいては化学療法に次ぐ治療の一般的な選択肢となるには至っていない。
2000年代に入り,免疫監視機構が存在するにもかかわらずがんが発生し進展することから,新たにがん免疫編集機構(cancer immunoediting)という概念が誕生した2)。がん細胞が増殖と進展の過程で宿主免疫を編集するという概念であり,①免疫系によりがん細胞を排除(排除相),②排除できなかったがん細胞が免疫監視下で長期生存(平衡相)し,③免疫細胞の攻撃から様々な方法で逃避する(逃避相)という過程でがんが発展していく,というものである。進行がんでは免疫逃避が主体であり,この逃避機構をいかに解除するかが腫瘍免疫治療の主体となってきている。